みなさま、こんにちは、久保田です。
昨日に引き続き、小説に関する話題をとりあげます。
先々週はじめ、文藝春秋のウェブサイトのトップページで
余華さんの『兄弟』が紹介されているのを発見しました。
余華(Yu Hua)さんは、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の
「文化人招へい事業」で2006年8月に来日された中国の小説家です。
現状、日本で最も有名な氏の著作といえばやはり
チャン・イーモウ(張芸謀)監督の手で映画化された
『活きる』(原題:活着)でしょうか。
当時、私はまだ入社前でしたが、いろいろなご縁があって、
ジャパンファウンデーションで開催されたイベント
「現代中国を“活きる”作家~余華さんに聞く」*1にも参加していました。
数時間のイベントでしたが、余華さんのお人柄や考え方に魅かれた私は、
それ以来、機会あるごとに、余華さんの作品やインタビュー記事*2を読んできました。
そのイベントやインタビューでも話題に挙がっていた『兄弟』。
発売日の6月25日、さっそく本屋さんに買いに行ったら、平積みになっていました!
そして、あとがきを読んで思わず呻ってしまいました。
…これは二つの時代が出会って生まれた小説である。
前者(文革編―引用者補)は文革中の物語で、狂気じみた、
本能が抑圧された痛ましい運命の時代、
ヨーロッパにおける中世にあたる話である。
後者(改革開放編―引用者補)は現在の物語で、論理が覆され、今日のヨーロッパよりも
はるかに極端な欲望のままに浮ついた、生きとし生けるものたちの時代の話である。
西洋人が400年かけて経験してきた天と地ほどの差のあるふたつの時代を、
中国人はたった40年で経験してしまった。
400年間の動揺と変化が40年間の中に濃縮された、非常に貴重な経験である。
この二つの時代を結ぶ紐帯はふたりの兄弟である。
彼らの生活は引き裂かれ、喜びと悲しみが爆発し、その運命は
二つの時代と同じように天地がひっくり返るほどの大騒ぎに翻弄され、
最終的に彼らは恩と仇がからみあった自分の行いの報いを受けることになる。
いろいろな意味でドキドキするあとがきだと思いませんか?
僕は現時点で前編まで読み終えたのですが、冒頭からしてすごかったです!
もしご興味のある方は、手にとってみては如何でしょうか?
先々週、余華さんはプロモーションのため約2年ぶりに来日されていました。
翻訳者の泉京鹿(いずみ きょうか)さんに伺ったところ、
余華さんはジャパンファウンデーションのことを覚えていてくださって、
しかも招聘時のことをいまでも感謝してくださっているそうです!
お互いを思う気持ちが活き続けているんだなと思って、
なんというか、暖かい気持ちになりました。
*1:余華さんに関するプロフィールはこちら。またイベントに参加された早稲田大学の木下先生からのご寄稿もぜひご覧ください。Vol.1 Vol.2 また、余華さんは『をちこち』No.14、No.16へもご登場頂いています。
*2:『中国語ジャーナル』2007年2月号に掲載されています。スピードはけっこう速いですが、すごく聴き取りやすい中国語で内容も豊かです。中国語を勉強されている方は、ぜひ聴いてみては如何でしょう?
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