Monday, December 4, 2006

第14号はベトナム特集です+今回もプレゼント企画もあります!




会う人ごとに「もう師走なんてシンジラレナイ」発言を聞いておりますが、2カ月ごとの『遠近』(をちこち)刊行ごとに現れる情報センターの麦谷です。





「ベトナムを再発見する」と題して日本とベトナムの交流をテーマに特集を組んだ第14号が発売中です。先日のハノイでのAPEC開催に安倍首相が経済界の代表を同行させたことに象徴されるように、政治や経済の分野ではますます緊密になってきている日本とベトナムですが、文化の交流、人の往来もますますさかんになってきています。





多くの日本人がベトナムと言えば、まずイメージするベトナム戦争やドイモイによる経済発展だけでないベトナムを紹介するよう心掛けて編集しました。是非、ご一読ください。


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目次はこちらですが、主な内容は・・・。


・ 巻頭座談 誇りとアイデンティティ ―― ベトナムの心を理解するために


  小髙 泰 × コシノ ジュンコ × トラン・ヴァン・トゥ × 小倉 和夫


・ 「戦後」30年のベトナム 中野 亜里


・ 「東遊」するベトナム人、「南遊」する日本人 ファン・フィ・レー


・ ベトナム生まれ、日本育ちの私からの提言 森 絵里咲


・ 在日ベトナム人が住みやすい社会をめざして ハ・ティン・タン・ガ


・ 急増する若き日本語学習者 大舩 ちさと 


Amazonなどの主要オンライン書店で取扱っている他、お近くの書店でお取り寄せが可能です。


それでは、今回も、『遠近』をより深くお楽しみいただくために、記事や執筆くださった方に関連した読書&WEB案内をお届けします。





◆ 気鋭の若い研究者の視点で編まれたベトナム研究書


『ベトナム戦争の「戦後」』(中野亜里編、めこん、2005)


ベトナム戦争の「戦後」


編者の中野亜里さんだけでなく、森絵里咲さん、巻頭座談にご出席くださった小高泰さんも執筆者に名を連ねています。ベトナム戦争終結後から、ドイモイ下での活気ある経済成長までは、あまり知られていない時代ですが、これらの「ベトナム戦争の戦後」について、丁寧に描いている好著です。





◆ ベトナムの歴史をたどる1冊


『物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム』(小倉貞男著、中央公論社、1997)


物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書)


新書にしてはやや厚めですが、国としてのベトナムの歴史から紐解いて、中国支配時代やフランス植民地時代について、勇将や詩人など国民的英雄に焦点をあてた物語が重ねられています。巻頭座談会で話題になった、チュン姉妹の悲劇の抵抗、長篇詩『キム・ヴァン・キェウ』、ファン・ボイ・チャウの東遊運動、独立を勝ち取ったホー・チ・ミンなどについても分かりやすく書かれています。





◆ サイゴン陥落を伝えた日本人女性の激動の半生を綴る


『ハノイから吹く風』(中村伸子著、共同通信社、2000)


ハノイから吹く風 サイゴン陥落を伝えた日本女性


ファン・フィ・レー先生が言及されたベトナムの農学の貢献したルオン・ディン・クア氏は、第二次大戦中、南方特別留学生として九州大学で学んでいました。研究室で知り合い、クア氏と結婚した中村伸子さんは、その後、ご主人のクア氏、お子さんらと苦労してベトナムに渡り、後には北ベトナムに入って現地放送局で日本語放送アナウンサーとしても活躍しました。違う体制下という難しい状況や決して裕福とは言えない境遇にありながら、ご家族との生活が「幸せ」とおっしゃる日本人女性の激動の半生記です。





◆ 日本のベトナム人コミュニティを知る


70年半ばから80年代にかけて、インドシナ難民として日本に来た多数のベトナム人が日本に定住しています。


『越境する家族―在日ベトナム系住民の生活世界』(川上郁雄、明石書店、2001)


越境する家族―在日ベトナム系住民の生活世界 


川上郁雄先生は、『遠近』6号に「日本語を母語としない子どもたちと―多文化共生時代の日本語教育」をご寄稿くださっています。


『日本のベトナム人コミュニティ―一世の時代、そして今』(戸田佳子、暁印書館、2001)


日本のベトナム人コミュニティ―一世の時代、そして今





寄稿者のベトナム関連新著です。2冊とも暁印書館HPでご覧になれます。


◆「アメリカに勝った」ベトナム人民軍隊の真の姿とは


『ベトナム人民軍隊―知られざる素顔と軌跡』(小高泰著、暁印書館、2006)


◆ まもなく発売!


『現代ベトナムの政治と外交―国際社会参入への道』(中野亜里著、暁印書館)





また寄稿者に関連するWEBページです。


NGO ベトナム in KOBE


神戸周辺に住むベトナム人の生活相談のホットラインや、交流の企画、ベトナム文化の紹介などの活動をしています。阪神大震災での活動がその発端になっていますが、詳しい経緯や活動の様子は、代表のハ・ティン・タン・ガさんによる本誌への寄稿「在日ベトナム人が住みやすい社会をめざして」を是非、ご覧ください。タン・ガさん自身、難民として来日し、現在は5児の母でありながら、同胞の支援に奔走されています。


トラン・ヴァン・トウ研究室


巻頭座談会にもご出席くださった早稲田大学のトラン・ヴァン・トウ先生のHPです。ご専門のベトナムの移行経済、東アジアの経済統合、ASEANと中国のFTAなどに関する論文なども読むことができます。


◆ 森絵里咲さんのベトナム戦争と文学に関するコラムが読めます


東京財団のリサーチ・フェローでもある森さん。東京財団HPに、「『金縛り』―ベトナム戦後生まれ世代作家の挑戦」、「『ダン・トゥイ・チャム日記』」が掲載されています。森さんは、この号の編集のピークに、編集部にかわいいハロウィンの手のりかぼちゃを差し入れてくださいました~!(まだ私の机で愛嬌を振りまいています。)





コシノジュンコ公式サイト


ベトナム文化交流ミッションメンバーで、ファッションデザイナーとしてもご活躍のコシノジュンコさんのサイト。ショーの様子を写真入りで紹介するブログ「コシノジュンコの、ねっ。」もあります。


◆ 日本語教育事情をもっと詳しく


日本語教育専門家の大舩ちさとさんは、基金HP「世界の日本語教育の現場から」にも、「大きな成長」と題して、主に彼女の主業務である教師研修や教科書制作についてレポートを寄せています。またハノイだけでなく、ホーチミンで奮闘する派遣専門家からのレポートもご覧になれます。


さらにベトナムの日本語教育を概観したいときは、「日本語教育国別事情」(ベトナム編)をご参照ください。





さて、最後に編集部からのニュースです。


主に過去にご寄稿くださった方の近著などをご紹介します。


◆ アーサー・ビナードさん構成・文の絵本


『ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸』


ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸


人類の大問題、原水爆を幻の名画で訴える絵本です。アーサー・ビナードさんは、『遠近』6号で作家の島田雅彦さんと「言葉に夢中になる快楽」をテーマにご対談くださいました。


◆ ローランド・ケルツさんの講演収録


今年6月20日に国際文化会館(東京)で行なわれた講演会(主催:文化庁、J-Lit Center)での講演が、「なぜ日本文学はアメリカで読まれているのか」として『群像』2006年12月号に掲載されています。翻訳は柴田元幸先生です。ローランド・ケルツさんは、『遠近』12号に「村上春樹について語るときに我々の語ること」をお寄せくださいました。


◆ ジャパンファウンデーションの2004年度のフェローの著書が、サントリー学芸賞に選ばれました


『戦後日本のジャズ文化―映画・文学・アングラ』


戦後日本のジャズ文化―映画・文学・アングラ


ミネソタ大学准教授のマイケル・モラスキー先生は、2004年度のジャパンファウンデーションのフェローとして来日なさいましたが、その研究をまとめた著書が、第28回サントリー学芸賞社会・風俗部門に選ばれました。12月11日に贈呈式が行われるそうです。おめでとうございます!


◆ 中上紀さんの最新短編集


『蒼の風景』


蒼の風景


巻頭随筆「をちこち散歩」にこの8月まで連載くださっていた中上紀さん。心地よくて懐かしい、そして少し不思議な物語が15篇が収録されています。多国籍の女子生徒が学ぶ高校が背景になった物語などは、中上さんの高校時代はこんな風だったのでしょうか?


◆ ノーベル賞作家、J・M・クッツェーのサイン本がJFICライブラリーに展示されています


9月29日~10月2日に早稲田大学で行われた「国際サミュエル・ベケットシンポジウム 東京2006」での講演のため、初来日したノーベル賞文学賞作家のJ・M・クッツェーさんですが、来日中にジャパンファウンデーション関係者と会い、ノーベル賞授賞式の際の講演を収録した特別本にサインの上、ご寄贈くださいました。現在、JFICライブラリーにて展示中です!


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私自身、直接お目にかかることができ、もの静かな佇まい、知性が滲み出るその姿に接して、是非、日本に長くご滞在くださり、日本の作家や知識人との交流、また読者との対話の場が設けられる機会が早く来ればと思いました。いくつもの作品が邦訳されていますが、代表的な1冊と、日本で最初の本格的研究書をご紹介いたします。


『恥辱』


恥辱 


『J.M.クッツェーの世界―“フィクション”と“共同体”』


J.M.クッツェーの世界―“フィクション”と“共同体” 


今回も随分長くなってしまいました。最後までお読みいただきありがとうございました。


今回も、このブログの読者の皆さんの中から先着10名の方に『遠近』14号をプレゼントいたします。ご希望の方は、ご自身のブログで、ベトナムに関連した記事をお書きの上、このブログにトラックバックをしてください!! 


トラックバックをいただき次第、発送させていただきます。メールアドレスを公開されていない方は、プレゼント発送のために、ご連絡先をwochikochi@jpf.go.jpまで、お知らせいただければ幸いです。(お知らせいただいた個人情報は、プレゼント発送以外には他用致しません。) お待ちしています。





次号の来年2月号は、「市民社会を支える財団」(仮題)です。


市民社会には欠かせない存在と言われる財団ですが、普段の生活ではあまり縁がなく、その活動内容はあまり知られていないのではないでしょうか? 国際交流に関わる助成財団・事業財団を中心に内外を比較しながら、その役割や意義を検証します。堅いテーマかもしれませんが、政府・公共部門(第1セクター)、企業など営利法人(第2セクター)につぐ、第3のセクターとして、これからますますその重要性が高まる非営利公益組織部門について、理解を深める1冊としてご期待ください。





それでは、みなさま、体調を整えて、よいお正月をお迎えくださいませ。






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