『をちこち』最新号、p.27~32に納められている細川多美子さんの論考は
本号における白眉だと個人的には思いました。
ブログ読者のみなさまにもぜひ読んで頂きたい一篇です!
さて今日は、細川さんの論考におさめられている1枚の写真から始まる話題です。
p.30ページの半分を占めんとする大きな写真には
「ヘソ出し(ハラ出し?)ファッション」の女性が映っています。
細川さんはここで流行という切り口からブラジルの人々
(ここではとくに女性)の価値観を分析なさっているのですが…
それではここで再びIさんにご登場願います。
とりあえずインタビューをご覧ください!
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久保田(以下、K):細川さんは「ブラジルに流行というものがあるのかないのかよく分からない」と
おっしゃっている一方で、サンパウロにおけるヘソ出しファッションの流行という現象もとりあげていらっしゃいます。
一読、このあたりが僕にはうまくつかむことができないのですが、これってどういうことなのでしょう?
もちろん流行はありますよ。でも日本の流行とはかなり違うわよね。
K:どういう点が異なるんでしょうか?
たぶん、流行が人に及ぼす力の強さがポイントだと思う。
受ける側の姿勢といってもいいと思うけれど。
ねぇ、たとえば日本の女の子のファッションって、みんなどこか似てない?
それぞれ違うものなんだけど、どこか画一的っていうか。
K:そうかもしれないですね。すぐ思いつくのはファッション雑誌や芸能人の影響でしょうか。
日本の女の子のあいだではみんなと同じじゃなきゃいけない」とか
「このラインは外せない」っていう意識が強い気がする。
翻ってブラジルでは「こうでなくちゃ!」という意識が強くない。
流行と呼ばれるような雰囲気があっても、「自分は自分でいい」というか。
K:「自分は自分でいい」ですか。
ちょっと話が飛ぶけれどダイエットって日本の女の子のあいだでよく話題にあがるよね。
これってブラジルでも一緒で、女の子はみんなダイエットに関心があるの。
「あぁ、やせなきゃ」っていつも言ってる。 これも流行と言えなくもないのかも。
でもね、確かに関心はあるんだけど、たとえ太っていても自分のことを否定はしないの。
太っている自分をだめだと思ったりしない。
K: 「太っている自分をだめだと思ったりしない」!。
「太っている自分が嫌い」じゃなくて、自分のいいところのほうが前に来る。
「目がかわいい!」とか
「自分の笑顔が好き!」とかね。
ファッションでもそうで、確かに力は弱いながらも流行はあると思うんだけど、
だからって流行に乗ってなければ自分はダメだと思うかというと、
あるいは逆に流行に乗っていなければ周りからダメだと思われるかというと、
そういうことがないのよね。
まぁ、これには他にも背景があるとは思うんだけど……
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Iさんにお話を伺う前、ブラジルにおける流行と個人の考え方の関係を
うまくつかむことが僕にはできませんでした。
それでIさんに「これってどういうことなんでしょう??」と質問してみたのです。
このあとIさんは、ブラジルという共同体のなかには、
日本以上に大きな地域差(あれだけ広大な土地なんですものね)や、
人種的な多様さ―白人、黒人、混血、アジア系…―、
さまざまな価値観があることを教えてくださいました。
容姿1つをとっても、何がかっこよくて、
何がかっこ悪いのか、定まりにくいんですね。
その多様さは価値観や審美観が容易に画一化されることを許さない
というふうにも言えるのかもしれません。
それにしても、自分の短所よりも長所を意識しているのは
前向きでとってもいいと思いませんか?
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今回の特集のタイトルは「遠くて近いブラジル」でした。
これまでずっと主に東アジアに関わってきて、
ブラジルを訪ねたこともブラジル人の知人もなかった僕にとって、
正直なところブラジルは「遠くて遠い国」でした。
誤解を恐れず言えば、実際のところ、多くの日本に住む多くの人々にとって
ブラジルは「遠くて遠い国」なのかもしれません。
やっぱり限界はあって、たとえ関心を抱いたとしても、
すべての物事に積極的に深くコミットすることはできませんものね。
でも、やや大げさな言い方になってしまいますが、
本特集を読みおえたあと、ブラジルはもはや僕にとって
「遠くて遠い国」ではなくなっていました。
数時間で何かが変わることもあるんだな、と思ったのです。
ところ変われば価値観変わる。
みなさんも『をちこち』第22号で
ブラジルに思いを致す、数時間の小旅行をしてみませんか?
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