すっかり桜の季節(東京)ですね。2ヶ月ごとの『遠近』(をちこち)刊行ごとに現れる情報センターの麦谷です。今回は 「隣人、ロシア」 と題して、ロシアの特集です。
政治・経済レベルでは、長年懸案の北方領土問題、そして、サハリン石油開発、リトビネンコ事件など、ここしばらくは、あまり明るいニュースを聞かないロシアですが、何と言っても日本海を挟んで実は隣国。
「お隣さん」とは仲良くしたいものですが、その割には、お互いに、現在の生活事情を共有できていないのでは?
日本人にとってのロシア文化⇒文豪、クラシック・バレエ⇒重くて古い、
ロシア人にとっての日本文化⇒フジヤマ、ゲイシャ⇒エキゾチック、
というステレオタイプなイメージを塗り替えるには、何事も互いに生身の姿を知るのが第一歩!
ということで、等身大のロシアを紹介する楽しい記事が盛り沢山ですので、是非、お読みいただければと思います。また『遠近』らしく、いろんな分野で日露交流に尽力した人についても特集しています。
○ 巻頭鼎談 ロシア文化の新しい動きと2度目の「日本文化ブーム」
河東哲夫×沼野恭子×日下部陽介
○ 新しいカルチャーが胎動するモスクワ
○ 人気推理作家にして日本文学者 ボリス・アクーニンに聞く
聞き手 沼野充義
○ アニメーション作家 ユーリー・ノルシュテインに聞く
聞き手 児島宏子
特集以外でも、島田雅彦さんが初めてのイラン滞在を綴った「テヘラン小景」、藤井省三さんが村上春樹の中の中国に着目して論考した「魯迅と村上春樹」など、読み応えのある記事を多数、お届けしています。
その他の記事については、目次をご覧下さい。Amazonなどの主要オンライン書店で取扱っている他、お近くの書店でお取り寄せが可能です。それでは、今回も、『遠近』をより深くお楽しみいただくために、記事や執筆くださった方に関連した読書&WEB案内をお届けします。
◆日本の「含蓄の美学」に影響を受けたベストセラー作家
人気推理小説家にして日本文学者のボリス・アクーニンさん。沼野充義さんのインタビューに応じて、日本との出会い、ロシアの現状と未来、日露交流などについて語ってくださいました。
アクーニンさんの代表的な作品、19世紀末から20世紀初頭を舞台にした歴史探偵小説「ファンドーリンの捜査ファイル」シリーズはロシアで大ベストセラーとなり、これまでに11冊が刊行され、映画やテレビドラマにもなっています。日本語では、巻頭鼎談の沼野恭子さんらが翻訳した3冊を読むことができます。
『堕ちた天使―アザゼル』(作品社)第1作
『リヴァイアサン号殺人事件』(岩波書店)
主人公が外交官として日本へ赴任する途上の豪華客船での密室殺人事件を描いた第3作
『アキレス将軍暗殺事件』(岩波書店)
柔術の達人のシバタ・マサヒロが登場する第4作
本名のグリゴーリイ・チハルチシヴィリで、世界の作家の自殺について論じた著書も。
『自殺の文学史』(作品社)
(゜-^*)σ アクーニンさんの公式HPは、ロシア語ですが犯罪のプロファイリングのような雰囲気満載です。筆名「アクーニン」の命名の秘話については、是非、本誌記事で!
◆蕪村の俳画を愛するアニメーション作家
表紙を飾った「こぐま」と「はりねずみ」、その愛らしい姿に見覚えがある方もいらっしゃるのでは? 手書きの切り絵を少しずつ動かして撮影するアニメーションの元祖とも言える手法で作品を制作するユーリー・ノルシュテイン監督。来日の度に通訳も務める児島宏子さんがインタビュアーとなって、日本映画や日本文化について、25年来製作中の『外套』の進み具合などについてお話を伺いました。
DVD 『ユーリ・ノルシュテイン作品集』
代表作の一つ『霧につつまれたハリネズミ』も収録されています。
絵本『きりのなかのはりねずみ』
↑で紹介した短編アニメーションの傑作『霧につつまれたハリネズミ』をもとに、児童文学作家セルゲイ・コズロフさんの物語に、アニメーション美術監督でノルシュテイン監督の創作パートナーであり夫人でもあるのフランチェスカ・ヤルブーソヴァさんが絵を担当した素敵な絵本です。弊誌の編集長の渡邊もこの本を見たとたんに、表紙はこれだ!と即決でした。
- 作者: ユーリーノルシュテイン,セルゲイコズロフ,フランチェスカヤルブーソヴァ,Yury Norshteyn,Francheska Yarbusova,Sergey Kozlov,こじまひろこ
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2000/10/25
- メディア: 大型本
- 購入: 5人 クリック: 156回
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DVD 『連句アニメーション 冬の日』
松尾芭蕉七部集「冬の日」の連句を、高畑勲、鈴木伸一を始めとした世界屈指のアニメ作家35人のコラボレーションによりアニメ化した大作で、ノルシュテイン監督も参加しています。
みやこうせいさんによる写真集
『ユーリー・ノルシュテイン』
◆ 人間味あふれるロシア人とロシア社会の一端をのぞく
外交官としてのべ11年にわたるモスクワ勤務経験を踏まえ、インターネット時代の日露交流について様々な提言をくださった河東哲夫さん。外交官としての知見をまとめた著書の他に、熊野洋のペンネームで、ロシアを舞台にペレストロイカからソ連崩壊前後の激動期の社会を描いた大河小説も。
『ロシアにかける橋―モスクワ広報・文化交流ノート』(かまくら春秋社)
『外交官の仕事』(草思社)
『意味が解体する世界へ 一外交官の考察』(草思社)
『遙かなる大地―イリヤーの物語』(草思社)
(゜-^*)σ 河東哲夫さんが主宰するブログ Japan-Worlds Trendsでは、日英中露4ヶ国語で国際問題や共通課題について様々なオピニオン・リーダーが白熱した議論をオンライン上で戦わせています。
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読書&ウェブ案内はまだまだ続きます。後編は明日掲載しますので、お楽しみに!
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