今日は、昨日に引き続き、セネガルからの報告をお届けします*1!
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大使館文化担当の仕事のひとつに、地方での教育広報と文化事業の実施があります。ダカールから遠く離れ、日本の文化に接する機会がほとんどない村落の子どもたちや住民を対象に、映画上映会や小学校でのワークショップを実施するもの。一回の「巡業」は3泊4日程度、それを年間3-4回。セネガルでは青年海外協力隊のみなさんが、各地で小学校教育(主に情操教育)や村落開発などの活動をされているので、その協力を得て実施するケースがほとんどです。
朝7時。「地方巡業七つ道具」を同僚のタルさんと一緒に車に積み込み、眠い目をこすりつつ出発。早朝の薄明かりの中、すでにダカールの渋滞は始まっています。昨今の絶え間ない都市改造計画のおかげで、道路は至る所が通行止めや工事中、あっちでもこっちでもクラクションが鳴りっぱなし、おまわりさんもお手上げ状態。ダカール脱出だけで2時間かかることもまれではありません。
さて、「七つ道具」の中身は何かというと、発電機とコードリール(重いんです、これが)、大小二つの組立て式スクリーン(重いんです、これも)、マイクにスピーカー、映写機にプロジェクター、ヴィデオ・カセット・16㎜フィルム、郷土玩具に日本の絵本、クレヨン・画用紙・にっぽにあ*2。
満載された荷物の隙間にちぢこまり、ガタガタ揺られること3時間半、村の小学校に無事到着。村は大抵、最寄りの町から約20キロ、砂地のオフロードを迷いながら分け入って行ったところにあって、人口はだいたい600人~1000人。もちろん小学校はひとつだけ。ここに、近隣の村の子どもたちも含めて300~500人が学んでいます。電気が来ていたりしたら、チョーめっけもの。水道もないことがしばしばです。村によっては壁も屋根もワラでできている「三匹の子豚」の家みたいな学校もあるんですよ(おまけにこの校舎、つい先日竜巻が来て、飛んじゃったそうです)。そんな中で生徒たちは、目を輝かせて生き生きと勉強しています。ちなみに「ワラ学校」は、その地域でも有数の成績優秀校。
子どもたちが目をまん丸くして見守る中、挨拶もそこそこに作業開始。発電機はあっちの木陰へ(音がうるさいので、なるべく遠くに置く)、スクリーンやプロジェクターはこっちの教室へ、とテキパキと組立てて(子どもたちの感嘆の視線にチョットいい気分)、いよいよワークショップの始まりです。
まずは日本紹介短編ビデオを続けて3本。日本の最新の話題を扱った「ジャパン・ビデオ・トピックス」から、子どもや学校、家族の生活などを取り上げた話題を選んで上映します。プロジェクターが古くてよく止まってしまうので、そういうときは急遽歌を歌ってみたり、日本語会話にわか講座をやってみたり。苦しまぎれに「あいうえお」と「あ」から「ん」まで一気にまくし立て、図らずも子どもたちの大喝采を浴びたこともありました。文化担当もラクじゃありません。(^▽^;)
次は、二手に分かれて、交互に絵本の読み聞かせと日本のあそび体験。赤羽末吉の「だいくとおにろく」などを読んで、感想を話し合ったり、日本の郷土玩具で遊んだりします。絵本はフランス語で読み、難しい単語には補足説明を加えますが、子どもたちの理解力や洞察力の深さに驚かされることもしばしばです。他方「あそび」は万国共通。万華鏡やだるま落とし、竹とんぼにおおはしゃぎ。
<絵本の読み聞かせ> <万華鏡に夢中な子供たち>
そして最後に「今日の体験を絵に描いてみましょう」と言って画用紙とクレヨンを配ります。「自由な発想で絵を描く」ということに慣れていないためか、どうしてもみんな同じような絵になることが多いのですが、中にはへええ、やるじゃない、という作品があったりして、いつもたのしみな瞬間です。
そうこうするうちにはや1時半。子どもたちにさよならして、昼食を取りながら先生や隊員さんたちと意見交換ののち、しばし休憩。セネガルの内陸部は季節によっては日中50度を超えるため、ここで少しでも休んでおかないと身体が持ちません。町に戻る時間がないときは、車の中や教室の隅っこなどで仮眠を取ることも。夕方涼しくなったら、今度は地元の若者に手伝ってもらって、夜の上映会用の映画のスクリーンを設置します。会場は、ワークショップをやった小学校の校庭。2006年は「ナビィの恋」を上映しました。全国各地11ヶ所、都合11回同じ作品を見たので、セリフも音楽もすっかり覚え、ナビィが長年のともだちみたいに思えてきました。
映画はパリの日本大使館所蔵の16㎜フィルムを借ります。村落での上映の場合、フランス語字幕が読めない人も多いので、現地語(ウォロフ語)で「弁士」をやるか、映像だけでも筋の追いやすい動きの多い作品(「ウォーターボーイズ」などは大人気)にするか、の選択となります。「ナビィ」はタルさんが弁士。声を枯らして毎回の熱弁です(どうもセリフにないこともしゃべっているらしく、やたら長い)。ともあれ、大きな画面に映る映像に、村の人たちもお祭り気分。上映を待つ間もにぎやかにおしゃべりしています。多いときは1000人近い村人が校庭に集まります。
上映が終わり、すっかり夜も更けて、満点の星の下でのあと片付け。「ご飯を用意したからどうぞ」と言われ、地元のお母さんたちの心づくしのセネガル料理をご馳走になることもあります。教室に戻って、「マイ・スプーン」を渡されて、片手にスプーン、片手に懐中電灯、といういでたちで(だって電気、ないんですよ)、暗闇の中で洗面器みたいな巨大なお皿に一斉にスプーンを突っ込んで、にぎやかに食べます。楽しかった一日の最高の締めくくり。そして関係者全員と、「また会いましょう」と固い長い握手を交わして(これ、ゼッタイ必要な礼儀)、学校を辞し、宿舎に向かいます。ときには宿舎近辺が停電で、あたり一面漆黒の闇、なんてこともあります。車のヘッドライトと懐中電灯で這う這うの体で宿舎を探し出し、暗がりで鍵穴をごそごそ探し、どうせお湯は出ないからいい加減に水で顔や手足を洗って、眠りにつけばはや午前2時。あー、明日も朝から小学校でワークショップ。( ̄▽ ̄;)!!
こうしてパリダカにまさるとも劣らない、体力勝負の私たちの地方巡業はまだまだ続くのであります・・・
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*1:オレペコより:昨日の記事に、booboo_002さん から早速トラバをいただきました。ありがとうございます!「月の夜に、バオバブの森をひたすら通過した…」 とありますが、さぞかし幻想的なことでしょうね。
*2:「にっぽにあ」は日本の最新のトピックを紹介する雑誌で、学校の先生に大人気。各学校に5冊ずつくらい持参します。
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