みなさんこんにちはー。オレペコです。
突然ですが、有名なモーターレース「パリ・ダカ」の終点、ダカールってどの国の都市だかご存知でしょうか?・・・そう、アフリカの”セネガル”です。私たち日本人にとってはなじみの薄いこの国で、一体どんな文化交流事業が行われているのでしょうか?セネガル大使館に出向し*1文化担当官として活躍中のの高須さんからの報告をお届けします!
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「セネガルって島だっけ?」・・・ちがいます。
「たしか、南半球だよね?」・・・ち、ちがいますっ。
「第一次世界大戦の火種になったところだよね」・・・・うーむ、それってセルビアなんですけど。
まあ、こういう人ばかりではないと思いますが(・・。)ゞ、セネガルは北緯14度40分、西経17度30分、アフリカ最西端に位置し*2、日本の半分くらいの大きさで、 小説「ルーツ」の主人公クンタ・キンテの祖国であるガンビアが国土の真ん中に「突き刺さって」いて(俗にいう「アフリカのとげ」)、国民の95%がイスラム教徒で、「公用語」はフランス語で、それ以外に「国語」が15以上あって、アフリカ随一の美男美女国と言われていて、パリ・コレのファッションモデルの多くはセネガル系で(ふー、息が切れてきました・・・)、なんて言われると、「へええ、そうなんだ」と思う人は少なくないかもしれませんね。
それじゃ「フジヤマ、ゲイシャ、アキハバラ」的な セネガル三種の神器 は何か。さしずめ「パリダカ、バオバブ、ユッスー・ンドゥール」といったところでしょうか。
「パリダカ」は、いわずと知れたヨーロッパとアフリカを結ぶ8000kmの苛酷な耐久戦。この一月のレースでは、片山右京さんが天ぷら油の廃油を使ったリサイクル燃料で砂漠を完走し、大きな話題を呼びました。
「バオバブ」は、サン・テグジュペリの「星の王子様」にも出てくる、セネガルの至る所に自生する巨大な樹木。サバンナを跳梁跋扈する妖怪の群れを連想させる怪異な風体ですが、昔から精霊が宿ると信じられており、セネガル人は畏敬と愛着をもってこの木を語ります。サン・テグジュペリはセネガル北部の町サン・ルイ(ちなみに世界遺産)から国際郵便を携えてモーリタニア上空を飛行していましたから、きっと上から下から、このバオバブたちを眺めていたことでしょう。
<左:これがバオバブの木です> <右:人が立ってみると・・ほら、こんなに大きいっ!>
そして最後に、セネガルが生んだスーパースター、ユッスー・ンドゥール。その圧倒的な声量と艶のある甘い声は、いまも世界中の人を魅了し続けています。マラリア撲滅キャンペーンや子どもの教育啓発など、社会貢献活動に熱心に取り組む篤志家でもあります。聞くところによると、ダカールの下町に自分のライブハウスを持っていて、週末は夜中の2時からユッスーが颯爽と登場、ダカールっ子総立ちの興奮の渦のなか、朝の5時まで歌うんだとか。
さて、せっかくですから、セネガル文化の特徴について少し考えてみましょうか。初代大統領で詩人としても著名なレオポルド・セダール・サンゴールは、文化多様性に基づく「世界文明」を提唱し、1966年に第一回黒人芸術文化祭をダカールで開催したことでも知られますが、その「定着と開化」の思想は、セネガルの文化人にいまも根強く継承されています。セネガル文化界のスーパースターとも言うべきサンゴール自身が、少数民族であるセレール族かつカトリック教徒であることにも象徴されるように、この国は、イスラム教徒もキリスト教徒もアニミスト*3も、ウォロフ族もプル族もセレール族もトゥクルール族もソニンケ族もその他さまざまな少数民族も、民族や宗教の壁を超えて(というより違いを「超えるべき壁」とは思わず)、混在するさまざまな違いをふくよかに包含し、総合的な文化的環境を形成する懐の深さを持ち続けてきました。セネガルはユネスコの「文化的表現の多様性の保護と促進に関する条約」(文化多様性条約)を、2007年3月の発効にさきがけていち早く締結した国のひとつですが、これも長年にわたって多文化・多言語・多宗教を平和的に共存させてきた国民性と社会的モラルの自然な延長であると言ってよいでしょう。
文化多様性と表裏一体をなす「無形文化遺産の継承」に熱心なことも、セネガル文化の大きな特徴です。みなさんは グリオって知っていますか?セネガルの各民族の歴史をそれぞれの言葉で、太鼓やコラという弦楽器などとともに「語り継ぐ」口承歴史家のことです。「ひとりのグリオが死ぬことは、図書館がひとつ焼けるに等しい」と言われるほど、その存在は文化の継承に重い役割を果たしています。2006年5月には、日本の重要無形文化財指定制度を参考にした人間国宝制度が制定され、太鼓奏者のドゥドゥ・ンジャエ・ローズや映画監督のウスマン・センベーヌなど、セネガルの文化をさまざまな形で豊かに継承する5名が認定されました。そのうち3人までがグリオです。ドゥドゥは家族(噂によれば、子どもだけで50人いるんだとか)を引き連れて、毎年のように日本でコンサートをしていますし、センベーヌ監督の「母たちの村」(原題「モーラーデ」)は昨年岩波ホールで公開されましたから、ご存知の方も多いと思います。ちなみにセンベーヌ監督は、1984年に実施された国際交流基金主催「アフリカ映画祭」の際、文化人として日本に招へいされています。
<基金が派遣した和太鼓ユニット「は・や・と」と交流するドゥドゥ・ンジャエ・ローズ>
「おいおい、『文化担当のおしごと』の話はいつ出てくるんだよ」とそろそろ野次が飛んできそうな気配になってきました。(^_^;)でもね、「1500字ですよっ」と言われているのに、あっという間に制限字数を超えちゃったもので、具体的な仕事については次回、たっぷりご紹介することにしましょう。お楽しみに。
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*1:ジャパンファウンデーションは海外19カ所に事務所を持っていますが、事務所が存在しない国・地域については外務省の公館に出向して外務公務員の身分で文化交流事業に携わる場合があります。2007年3月時点で、計10ヶ所(モスクワ、ウイーン、ベルリン、上海、重慶、ニューオリンズ、カラチ、ハノイ、ダカール、タシケント)に職員が出向中です!
*2:といっても、場所がすぐ思い浮かぶ人、少ないですよねー。確かめたい人は、こちらの地図でどうぞ。
*3:オレペコより:Animist=精霊を信仰・崇拝している人々のこと
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