Wednesday, September 20, 2006

◎インターン生特集◎その10 片岡さんの場合






みなさん、こんにちは!

9月4日から22日までの3週間、国際交流基金芸術交流部トリエンナーレ準備室でインターン研修をしました学習院女子大大学院、国際文化交流研究科の片岡裕子です*1。「日本文化の発信や国際交流になんらかの貢献ができれば・・」との思いから文化政策やアートマネジメントを学んでいる私にとって、基金で過ごした3週間は、刺激と充実の日々、まさしく“日常からの跳躍 Jumping from the Ordinary”といえる毎日でした。今回このような機会を与えてくださった国際交流基金と学習院女子大学に深謝申し上げたいと思います。


私と国際交流基金との出会いは、やはり“横浜トリエンナーレ”においてでした。さかのぼること9ヶ月前、第2回横トリのキュレーターを務められた芹沢高志氏が大学に来られ、「トリエンナーレの現場から」というテーマで講義をされました。「現場ってなんて面白いんだろう!!」と言い知れぬ高揚感で居ても立ってもいられなくなった私は、講義終了とともに大学を飛び出し横トリ会場へ直行。くしくもその日は芹沢氏ご自身がガイドツアーの担当だったので、「えっ!!君、また来たの?」と苦笑されながらも、詳しい解説とともにアート作品一つ一つを丹念に見て回るという幸運な体験をいたしました。「アートマネジメントを勉強したい!」という気持ちを決定的なものにしたこの日の感動を、くしくも今こうしてトリエンナーレ準備室でインターン研修をさせていただきながら、不思議な感慨とともに懐かしく思い出しています。


このことがあってからというもの、すぐさま“JFサポーターズ”に登録し、会社説明会に出席したり、ゼミの研修で基金を訪問しブリーフィングを頂いたり・・とできる限りの情報を集め、基金の活動について“知ってるつもり”にはなっていましたが、やはり言葉での理解と、実際に実務体験をさせていただくのは大違い。横トリで私があのように感動できたのも、トリエンナーレ準備室の皆さんの地道な業務と果敢な挑戦があってのことだったのだ・・と目からウロコの日々でした。


インターンで私がさせていただいた主な業務は・・・、


①横浜トリエンナーレ招待客の名簿整理 


(個人情報管理の責任の重さを実感! 横トリの広報戦略について考えながら作業を進めました。)


②トリエンナーレを記録したDVDのチェック


(横トリができあがっていくプロセスをくまなくチェック!)

③巡回展「現代日本デザイン100点」、「日本の現代写真―1970年代から今日まで」(仮称)出展作品の台帳作り*2


(世界中を巡回する日本のアート作品の画像を取り込み、明細を書き込む作業。キッコーマン醤油のビンとか、無印良品の家具とか・・私たちにおなじみのメイド・イン・ジャパンのデザインが世界の人々の目にはどのように映るんだろう??と遠く思いをはせながらの楽しい作業でした。これこそ日本文化の発信!)


④巡回展 出展作家の経歴と作品解説英訳の校正


⑤図書整理


⑥巡回展に出展する写真の撮影、整理(倉庫にて)


・・・などなどでした。


そんな日常業務の合間に、出張から戻られた方たちから上海ビエンナーレ、シンガポールビエンナーレ、ヴェネチアビエンナーレのお土産話を伺ったり、図録やスライドを見せていただいたり、講演会やフェロー勉強会、日本語教育助手の方たちの帰国報告会等各種イベントに参加したことも、刺激的な経験でした。

なかでもオーストラリアの美術評論家ジョン・マクドナルド氏を迎えての講演会『豪州:多文化社会における現代美術』では、「どの国の人間であるかというナショナルアイデンティティーは、もはやさほど重要ではない。ひとりひとりの内なるアイデンティティーのなかに複数の異なる文化を抱えることが肝要である」といったメッセージに深く納得しました*3


またフェロー勉強会で、アメリカの博士課程の日本文化研究者たちの発表を聞いたことも大きな収穫でした。「日本人はなぜラーメンが好きなのか?」というユニークな切り口で日本の食文化と政治経済との関連性を分析するという興味深い研究発表を、通訳なしの英語で聞いたのは、まるで一日留学体験をしたようなエキサイティングな体験でした。発表後の懇親会で、何人かの外国人研究者と和気藹々とおしゃべりしたのも楽しい思い出です。「マンガやアニメ、オタクなどクールジャパンといわれるポップカルチャーが世界中で人気だが、日本文化について何も知らない人にオタク文化だけを強調して紹介するのはいかがなものか?」という鋭い指摘がアメリカ女性から飛び出したりして、考えさせられました。


そんなこんなで、瞬く間に過ぎていった3週間。最後に私のインターン研修を支えてくださったトリエンナーレ準備室の伊東正伸室長、小山奈緒美さん、松岡裕佑さんに、心からの感謝を申し上げたいと思います。


伊東室長へ・・上海ビエンナーレのお話ありがとうございました。『アートマネージメント』


(武蔵野美術大学出版局)は私のバイブルです!修論がんばりま~す。(^o^)丿


小山さんへ・・インターン初日の朝、緊張と不安でカチンカチンの私を出迎えてくださったのは小山さんの柔らかな笑顔でした。小山さんの笑顔となめらかなお話にすっかり肩の力が抜け、(抜けすぎたのでは??・・と今になって少々反省(^^ゞ)、リラックスして業務を開始することができました。ベネチアビエンナーレのお話もありがとうございました!


松岡さんへ・・いつもさりげなく適確にエスコートしてくださり、私にとってこの上なく頼もしい上司でした。イベントに参加できるように勧めてくださったり、他の部署の方と知り合えるようにお昼をセッティングしてくださったり・・と、松岡さんの粋なはからいのおかげで、3週間のインターン生活が本当に楽しく充実したものになりました!m(__)m



決して潤沢とはいえない文化予算、税制優遇措置の未整備、指定管理者制度などの制度改革など、日本の文化をとりまく状況は厳しく、ともすれば肩を落としてしまいがちですが、国際交流基金のみなさんは笑顔が素敵です。(^o^) 日本の文化力を推進するためには、ひとりひとりが文化力、つまりソフトパワーを持たなければならないんだということを実感したこと、これがインターンで得た一番の収穫だったかもしれません。残念なのは、一般の人に基金の活動がまだ十分には認知されていないような気がすることです。文化を裏から支える名脇役として、国際交流の水先案内役として、基金のますますの発展と第3回横浜トリエンナーレの成功をお祈りしています。基金のシンボルのあの紫色の蝶々のように、私もこの経験を糧にしてのびやかに前進していきたい、と思います。ありがとうございました。




*1:こんにちは、松岡です。久しぶりの登場です。そういえば異動をしてから自分の仕事のことを書いてなかった、と片岡さんのブログを読んできづきました。隣の課の造形美術課の仕事の様子とあわせてお楽しみください。結構地味です。


*2:これは僕が今担当している造形美術課の業務です。さりげなく手伝ってもらいました。


*3:ジョン・マクドナルド氏はオーストラリアを代表する評論家で、オーストラリア最大発行部数を誇る新聞で美術評論のページを持っているほどの方です。僕も参加しましたが、オーストラリアに引き寄せられた多くの「外国人」の目を通したオーストラリア美術の話は大変興味深かったです。





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