Tuesday, August 14, 2007

やっぱり、文化交流は双方向だよね!~Casa Asiaのガエルさんを迎えて~






f:id:japanfoundation:20000218090806j:image:left みなさん、以前このブログで松岡さんが、スペインのCasa Asia という文化交流団体での研修について報告していたのを覚えていますか*1?ジャパンファウンデーションは、Casa Asiaとのあいだでさまざまな形での連携を進めていますが、その一環として、おたがいに職員を一定期間受け入れる人事交流を行っているんです。




今回は、7月から1ヶ月間ジャパンファウンデーションにいらしていた、ガエルさん(Ms. Gaelle Patin Laloy)に突撃インタビューを敢行しましたので、その様子をお届けしましょう!ちなみに、インタビュアーは松岡さんとさとじーさんにお願いしました。ではでは、どーぞ*2





■ Casa Asiaって何をやっている団体なの?



Q:ガエルさん、まずはCasa Asiaの活動について簡単に教えてください。 

:Casa Asiaは、スペイン外務省、カタルーニャ州政府、それからバルセロナ市の3者によって設立された、公的な文化交流機関です。バルセロナに本部がありますが*3、最近、マドリッドにも事務所ができました。ほかにもバスク地方などから事務所を作ってほしいという要望もありますが、今のところ、地方については地元の団体と協力しながら事業を実施しています。


主な活動目的は、アジア・太平洋諸国の文化をスペインのひとびとに紹介することです。文化芸術の紹介や語学教室、会議やセミナー等を通じて、アジアのいろんな側面を知ってもらうように努めています。また、アジア関係の講座を持つ大学の修士プログラムを支援したり、そういった講座の新規開設を推進したりもしているんですよ!





Q:素朴な疑問なんですけど、「アジア」っていろんな定義がありますよね?Casa Asiaで「アジア」というとき、どのような国々を含むんですか?


:西はイランから始まり、パキスタンやインド、アフガニスタンなどの南アジア、旧ソ連の中央アジア、それから東南アジアと北東アジアの国々ですね。イラクとトルコは含んでいません。






■ 人事交流プログラムに参加して



Q:今回、ガエルさんがこのプログラムに参加しようと思ったきっかけはなんですか?

:以前中国語を勉強していたのですが、実はもともとは日本語クラスの受講を希望していたんです。申し込みも済ませていたのですが、認められなくて中国語に。なので、昔から日本には興味がありましたし、実際中国やシンガポールなど、他のアジアの国々に行った経験から、ますます関心を持つようになっていました*4。そんな中、一ヶ月という長い期間、日本に滞在できるなんて滅多にないチャンスだと思って参加を決めました。





Q:日本で働いてみた感想を教えてください。

:今回の私のミッションのひとつは、11月にスペインで開催予定のEast-West Dialogueに、日本のハイレベル・スピーカーの参加を取り付けることでした*5。みなさんのご協力もあり、非常に素晴らしい研究者の参加をとりつけることができ、満足しています。


今の時代、各分野にどのような候補者がいるかとか、その人の研究業績とか、大体の情報はインターネットで調べられるようになってはいますが、やっぱり、実際に会って話をするのとは違います。その意味でも、ジャパンファウンデーションのように、人的ネットワークや知恵を共有できる仲間ができたことは良かったです。また、今回の訪日で、日本の文化・学術交流を担っているいくつかの組織を訪問して新たなネットワークを作れたので、これから活かしていきたいですね。






■ 日本の印象



Q:月並みな質問になってしまいますが、日本に来て驚いたこととか、特に印象に残ったことってありますか?


:ある意味ではヨーロッパ以上に発展している面と、豊かな伝統とがうまく共存していることがすばらしいなあと思いました。それから、たとえば鍵をかけないで自転車を道端に駐車しておいても、盗られたりしないとか・・・とにかく安全なことが印象的でしたね。夜も一人で歩けますし。そういった面は、ぜひ、ずっと変わらないでいてほしいと強く思います。





f:id:japanfoundation:20070725191750j:image:rightQ:伝統文化といえば、ガエルさん、日本に来てすぐに、ジャパンファウンデーションの職員 が企画した「屋形船で飲もう!」企画にも参加してくださいましたね!


それにしても、町並みとかはバルセロナとかのほうがずっときれいでいいですよね。古い景観とかがしっかりと保存されているし。日本は雑然としてしまっています。


:「きれい」で思い出しましたけど、日本は街にゴミ箱が少ないのに驚きました。歩いていて、何気なく紙をもらってしまったりすると、そのまま2時間くらいは持って歩くことになってしまいます(笑)。だけど、もっと驚いたのは、そんなにもゴミ箱が少ないにも拘わらず、日本の街はヨーロッパの一般的な町よりずっとごみが少なく、クリーンなことです!


⇒あはは、確かに。


ちなみに、95年の地下鉄サリン事件の影響で、街からゴミ箱が消えていった気がします・・・。  



■ ジャパンファウンデーションとCasa Asiaってどんな違いがあるの?



Q:さあ、いよいよ今日のメインテーマなんですが(笑)。


ジャパンファウンデーションは、「国際相互理解」をひとつの目的にかかげていることからもわかるように、日本文化や日本語の海外での普及だけでなく、海外の文化を日本で紹介することにも力を入れています。一方、スペインでは、政府がCasa Asiaを通じて、他の国々の文化を、ある意味ではその国に代わって自分の国で紹介する「Import(=輸入)」に力を入れているわけですよね?これは結構珍しいことだと思うんですが、政府がアジア文化紹介に力を入れている理由は何だと思いますか?


:これまでスペインは、歴史的経緯もあって、ラテンアメリカとの関係が非常に強かったんです。でも最近、中国・インドの台頭もあって、アジアとのかかわりが増えてきました。もっと言えば、スペインに限らず、今や、アジアとかかわりを持たないで生きていける国はないと思います。


とはいえ、一般的なスペイン人にとって、まだまだアジアは遠い国々。なので、まずは相手のことを知らなければならない、ということだと思います。また、特にバルセロナにはわりと大きなアジア系コミュニティがあるので、スペイン人にとっても「アジア」が身近なものになってきていて、「もっと知りたい」という要望も多いのです。


一方、スペイン語やスペイン文化を海外で紹介する機関としては 「セルバンテス文化センター」 があります。





Q:スペイン文化の「Export(=輸出)」の役割を果たしているセルバンテス文化センターは、91年に設立された一方、Casa Asiaの設立は2001年。ということは、今は「Import」に力を入れるべきだ、という政策的な意図があってのこととは考えられませんか?


:政策の変更というよりは、認識の問題ではないでしょうか。Casa Asiaのほかにも、Casa AfricaとかCasa Arabとか、他の国・地域の文化をスペイン国内で紹介する類似の機関は既にいくつもありますが、これらの根本にある思想は、国際文化交流はMutual(相互/互恵的)であることが重要だ、ということだと思います。二国間関係強化のためには、 相互理解 が欠かせないのです。


⇒なるほど!ひとつの組織でやっているか、別々の組織でやっているかは別として、目指すところは「相互理解」、これですね!






■ もっとスペインを知ろう!



Q:ところで今、「セルバンテス文化センター」の話が出てきましたが、東京にもこの秋、待望のセルバンテス文化センターができますね!


:ええ。昨年からアジアに次々にオープンしていて、北京、デリーに続き東京が3つ目です。しかも東京のセンターは、単にスペイン語を学ぶだけではなく、映画上映、フラメンコのレクチャーなどスペイン文化に触れることのできる講座を備えた、世界中のセルバンテス文化センターの中でも最大規模のものになる予定なんです!





Q:実際、建物を見に行きましたけど、ものすごく立派ですよねー。僕も通おうと思ってます(笑)。そういえば、バルセロナのCasa Asiaのオフィスも歴史の重みを感じる、美しい建物ですよね。バルセロナを訪れたら、ぜひ一度足を運んでほしいな。


:旅行者だけでなく、スペインで日本文化を紹介したいが場所がない、という方々も、Casa Asiaにご相談していただければ、私たちの美しい建物の一角をお貸しすることができるかもしれません。もちろん、内容にもよりますが、訪問・ご相談は大歓迎です!ぜひCasa Asiaに足を運んでください






ガエルさん、どうもありがとうございました!  




  • *- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*-





◆インタビューを終えて◆


今回のガエルさんとのインタビューをしていて、ちょうど最近読んだ、1冊の本を思い出しました。


[rakuten:book:12079772:detail]





職場の上司が書いた本です(本件については、このブログでも後日語られると思います)。


個人的な感想としては、国際文化交流という、なんとなく分かるようでつかみどころのないような概念を、自分達にとってより身近な社会問題にグッとひきつけて語っていて、「ああ、そういう説明のしかたがあったか」と勉強になる、刺激的な本でした。


そのあとがきの一部を、ちょっと長いですが引用します。



・・・・


今日、世界が直面している暴力、テロなどの根本の部分に存在するのが、「富の不平等」と「誇りの不平等」である。


・・・・


傷ついた人々の誇りをいかに回復させるか。人が人らしく生きていくためには「誇り」が必要だ。相手に対する尊敬の念を欠いた一方的な経済援助や、「俺のやり方を学べ」式の押し付け的な民主化は、中東や南アジアの「誇り」を傷つけ、「過剰アサビーヤ」を生み出す。


・・・・


日本が「九・一一」以降、中東向け国際文化交流事業で大切にしてきたのは「相互理解」という考え方だ。


・・・・


一方的に自国の価値や文化を中東の人々に語るのではなく、中東をもっとよく知ろうと、中東の現代舞台芸術、造形芸術や映画を日本社会に紹介してきた。


・・・・


相手を変えようと思ったら自らが変わる勇気をもつこと。相手に愛してもらおうと思ったら、自らが相手を愛する度量を持つこと。戦後日本はアジアとの交流を通じて、こうした教訓を学んできた。「私達は貴方たちを尊敬している。貴方たちのことをもっとしりたい」。これこそが、日本が中東に向けて発しうるメッセージの出発点と、私は信じたい。



国際交流基金という政府機関の役割として相互交流性の重要さを語ることと、スペインの政府機関スタッフであるガエルさんが、インタビューにおいて「国際文化交流はMutual(相互/互恵的)であることが重要だ」とおっしゃったこととが、僕の予期しない中で一致しました。


ここに今の時代の流れ、というか時代が求めているもの、のようなものがあるのかもしれません。


(松)




*1:3回にわたって、Casa Asia の活動紹介を書いてくれています(Vol.1. Vol.2, Vol.3)。


*2:ちなみにこのCasa Asiaのロゴ、某テレビ局(T放送)のロゴに似ていると思うのはオレペコだけでしょうか???笑


*3:HPはこちら。スペイン語だけでなく英語でも見られます!


*4:ガエルさんは、なんと、母語のフランス語のほか、スペイン語、英語、イタリア語、中国語が話せるそうです!す、すごい!!


*5:ガエルさんのCasa Asiaでのご担当は、セミナーや会議の企画運営部門。中でも大きな事業が、毎年開催している国際会議、East-West Dialogueなんだそうです。昨年の会議テーマなどは、こちらでご覧になれます。





No comments:

Post a Comment