先月のブログ編集会議でのひとコマ。
A:11月は勤労感謝の日で連休があるねー。やったー!
B:そういえば、アメリカも同じ時期にサンクス・ギビングでお休みだよね。ターキーの丸焼き、食べたい!
C:サンクス・ギビングって、日本語では”感謝祭”って訳されてるけど、実際何に感謝する日なのかな*1?
一同: ・・・ ( ̄ー ̄?).....??アレ??
このあと急いでウェブで調べてみると、実は
世界にはいろんなもの・ことに感謝する日がある
ことが判明!そんなやりとりから始まった「世界の○○感謝の日」シリーズ、第一回目のインドネシア・バリ編につづき、今日はインド「師匠の満月」編をお届けしましょう!オレペコと同じ部署で働く、シタール使い*2の稗田礼三郎氏(?)からの報告です!
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インドでは7月から8月頃に来る満月の日を「グル・プールニマー」と呼びます。グルとは「師匠」、プールニマーとは「満月」。習い事をしている師匠にご挨拶に伺う日です。この日は、ヒンドゥー教の聖典ヴェーダの編纂者であり、大叙事詩『マハーバーラタ』の作者でもあるヴャーサが生まれた日といわれています。ヴャーサこそ師匠中の師匠だと考えて、この日を師匠に感謝する日にしているのです。
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私がシタールを習ったA先生は古い人で、自分の誕生日も太陰暦で数えています。先生の誕生日は「ブッダの満月」と呼ばれるヴァイシャーカ月、つまり、太陽暦4月頃の満月の日です。インドではお釈迦様が生まれた日、悟った日、死んだ日は、みな同じ日で、それが「ブッダの満月」の日です。A先生にバースデーカードを送るためには月の満ち欠けをチェックしていなければなりません*3。
A先生は気難しい人で、約束のない日に訪ねて行っても決してドアを開けてくれません。「ベルを3回鳴らして反応がなければメッセージを置いて帰るように」というプレートがドアに埋め込まれています。そのドアが一日中開いていて、弟子たちなら誰でも来てよい、というのが「師匠の満月」の日なのです。バンスリ(インドの横笛)奏者のハリプラサード・チャウラシアさんも、その日には、なるべくコンサートの予定を入れずに、自分の師匠であるA先生のところに挨拶に来ます。ハリプラサードさんはA先生のところから自宅に帰ると、今度は、自分の弟子たちの挨拶を受けることになります。このように、インドでは、この「師匠の満月」を今も大切にしています。
インドの伝統では挨拶する場合、目下の人は目上の人の両足に手を触れ、その手で自分の額や胸に触れます。子供が両親に挨拶する場合もそうです。もっと本格的になると、ひざまずいたり、五体投地をしたりして、自分の額を目上の人の足につけます。目上の人は目下の人の頭に手をかざして祝福を与えます。
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ああああああああ
A先生は弟子が両足に手を触れて挨拶するところまでは受け容れますが、あまり自分が大きく扱われるのは嫌いなので、それ以上の格式ばった挨拶を弟子たちに許しません。先生は自分への挨拶よりも、集まった弟子たちが、自分のお父さんである大師匠の遺影に挨拶をすることを喜びます。A先生にとって「師匠の満月」に自宅を開放することは大師匠への敬意の表現であるようです*4。
私にサンスクリット語を教えてくれたV先生も師弟の関係をことさらに強調するようなことは嫌いなタイプの人で、両足に手を触れようとすると「やめろ、やめろ」といって止めましたし、「先生、今日は師匠の満月です」というと「ほう、それがどうした?」と返事をするような人でした。
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V先生は今年8月2日永眠なさいました。先生が亡くなる4日前の7月29日は「師匠の満月」の日でした。その日、日本にいて挨拶に行けなかった私のことをV先生は思い出して話していた、と、先生の娘さんから聞きました。
V先生への感謝とともに、先生のご冥福をお祈りいたします。
あああああああああああああああ稗田礼三郎
*1:もともとは、神の恵み(収穫)に感謝する日だったようですが、最近ではその宗教的意味合いは薄れ「家族や親戚・友人が集まってターキーを食べること」がメインになっているようです。なんとなく日本のお盆のような感じですね
*3:オレペコより:毎年決まっていても、うっかりお祝いの言葉を忘れてしまったりすることも多いのに、月の満ち欠けまでチェックなんて大変ですね・・・
*4:A先生も自宅も撮影厳禁なので、マディヤプラデーシュ州にある大師匠の家の写真。各部屋は大師匠存命時のままに保たれて、近所の子供たちの音楽練習場になっている。ここを訪ねたとき、駅に降り立つと駅員に「君を捜している老人がいたよ」といわれたけれど、そこに知人などいない。あれは大師匠だったのだろうと信じている
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