Monday, March 24, 2008

 裁判員制度開始を前に・・・






みなさんこんにちは、オレペコです。





いきなりですが、先日、ある事件の被告の精神鑑定について「検察側と弁護側の鑑定が一致:異例の事態」といった文字が新聞で踊っていましたね。これまで、精神鑑定は公判を数ヶ月中断して行われていたのが、今回は公判の進行と並行して実施された上に、結果を2名の医師が法廷に並んで口頭で説明するという異例の手法が使われたそうなのですが、それもこれも、2009年から始まる「裁判員制度」をにらんで、結果を分かりやすく伝えることを狙ったものだとか。





まだ先だと思っていた裁判員制度。


それでちょっと思い出したのですが、今年度の日本の映画賞を席巻した『それでもボクはやってない』が昨秋、ニューヨークで公開されたときに、ジャパンファウンデーションは周防監督の渡航費等を支援しました。





ジャパンファウンデーションでは、海外で日本映画祭を共催で実施するだけでなく、上映にあわせて監督を派遣することもしています。特にこの作品のように「日本の司法制度」といった難しいテーマが取り上げられている場合、監督と直接対話ができるというのは現地の人々にとってはまたとないチャンス!!!ということで活発な議論が繰り広げられたのだそうです。今日はNYから、その報告をお届けします!





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2007年10月9日と10日の二日間、周防正行監督の新作『それでもボクはやってない』がニューヨーク国際映画祭で公開された。またこの作品は10日、全日空(ANA)が主催する“Nippon Eiga” シリーズの一環としても上映された。

これに際し、国際交流基金ニューヨーク事務所はANAと提携して周防監督のニューヨークへの渡航費を補った*1





f:id:japanfoundation:20080321164743j:image:right前作『Shall We ダンス?』が日本国内外と大反響を呼び、アメリカ版リメイクも作られただけあって、この作品は大きな期待と注目の中で公開された。





ニューヨーク国際映画祭の会場はTime Warner Building内に去年オープンしたJazz at Lincoln CenterのメインであるFrederick P. Rose Hall。華やかな雰囲気の中、1200人以上を収容するこの巨大なホールに両日とも多くの観客が訪れた。





痴漢冤罪を取り扱った社会派の映画のため、観客は固唾を呑んで映画の展開を見守ったが、全体を通して周防監督独特のユーモアが含まれており、会場にはしばしば笑い声が漏れた。





この作品は周防監督が5年前に新聞で読んだ痴漢冤罪の記事が基となっている。この事件に興味を持った監督は、日本の司法制度を徹底調査し、200回もの裁判を傍聴した。また無実を訴えている人、彼らの擁護団も取材し、無罪だと主張しながらも殆どの人が有罪判決を受けている現状を知った。理不尽で一方的な日本の司法システムをより多くの人に知ってもらいたい、また自身が調査した中で感じた驚き、不満を観客にも感じてもらいたい、という願いから今回の映画を作るに至った。





毎日どこかで起こっている故、誰でも容疑者に間違えられる可能性がある痴漢。実際に訴えられるのは中年のサラリーマンが多いが、家族や社会的立場を考えて裁判を起こさないケースが殆どだ。そのため、この映画では26歳のフリーターを主人公にしたことで敢えて家族や社会責任の要因を省き、観客が日本の裁判システムの現状に集中できるようにした





上映後、会場には大きな拍手が沸き起った。続くQ&Aでは、観客から日本とアメリカの司法制度の違い、裁判官を裁けるか否か、また何故交通システムを見直さないのか(なぜ鉄道会社を訴えないのか)といったアメリカならではの質問が多く寄せられた。監督はそれらの質問に対して、官僚主義的な日本の裁判システム、裁判官の現実、人事異動の問題、東京高裁の実態などに触れつつ、つぶさに応答した。





このように監督を上映に招き、Q&Aを行ったことは極めて貴重であり、映画上映のみだと難解かもしれない日本の裁判システムを監督が丁寧に解きほぐして説明するという良い機会となった。また多くの現場を見てきた監督の率直で辛辣な意見は非常に面白く、日本の実情を垣間見た観客は非常に満足していた様子である。





f:id:japanfoundation:20080321165240j:image:left一方ANA “Nippon Eiga” シリーズの上映会はアジア映画を専門に上映する映画館Imagin Asianで行われた。 大勢の人が押しかけ、会場はほぼ満席状態。上映前に周防監督が舞台挨拶をし、痴漢の実態と日本の裁判システムについて簡単に述べた。監督は最後に「(映画を)楽しめるかどうかわかりません。覚悟してください」と観客に内容のリアルさと深刻さを警告した。





2009年からは一般人が裁判に参加する裁判員制度が日本に導入される。ますますこの映画から目が離せないようだ。


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日本の司法システムについてじっくりと思いをめぐらす良いきっかけになりそうですね。


まだ見ていないそこのあなた、裁判員として呼ばれる前に、ぜひ!!!




*1:関連記事もあります。こちら





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