Friday, July 20, 2007

『日本語でケアナビ』開発秘話(後編)




なんだか夏前に逆戻りの陽気ですね。潮風です。

前回、開発秘話を提供した国際交流基金の新しい日本語教育支援ツール『日本語でケアナビ*1


今日は続いて後編の紹介です。どうぞ!



田中:話をデザインに移したいと思います。画面のデザインはどんな点に配慮しましたか。


f:id:japanfoundation:20070718195322j:image:left前ちゃん:言いたいことは山ほどあって、たぶん、一日中話していても足りないと思うんですが、ひとことで言うと、「机の上でノートを開いて勉強している」というのがコンセプトなんです。だから、一般的なウェブのデザインと少し違っていると思います。色も毎日見て飽きない、嫌にならないようにと「緑」を基調にしました。いつか、「あの緑のホームページ」って呼んでもらえたら、うれしいんですが。


しもやん:想像していたのより、ずっと親しみやすい感じで、わたしはこの画面、好きです。


田中:一番苦労したのは、どの部分ですか。


前ちゃん:やっぱり、「タグナビ」の部分ですね。どうやってビジュアル化して、知らない人に、文字の説明なしで触れてもらえるか。


田中:その「タグナビ」、タグ検索について、少し話してもらえますか。


すなみ:タグ(tag, 札)を使って分類するっていう概念自体は、ネットの様々なサービスで使われています。ある属性を表しているタグを使って、時にはそれを複数選択して絞りながら検索する方法です。実は、最初、開発スタッフに説明してもなかなか理解してもらえませんでした。説明の資料を配ったり、デモサイトを作ったりして、努力したんですが(笑)。


上田:確かに、デモサイトを見て、自分で動かしてみて、やっとタグ検索が少しわかったかなという感じでしたね。


すなみ:そうなんです。タグについて、口で説明するのは難しいんですが、実際に使うのは、そんなに難しくない。そして、タグナビを使うと、例えば、自分好みのリストを作ることができます


前ちゃん:初めてタグがわかったとき、「すごい」って思いました。普通の辞書だったら、分類の方法がABC順とか場面別とか決まっているけれど、タグナビは使う人に自由があるという感じを受けました。例えば、「病院ではたらく」と「飲む・食べる」、「時間」で絞ると、「食前」「食間」「食後」といった語彙リストができます。

はたんぼ:それに、タグナビってなかなか面白いんです。例えば、「行く・来る」というタグと、「人生」というタグで絞ってみると、登場するのは「あの世に行く」なんです。ちょっと笑ってしまいました。これも、教科書にはあまり出てこない表現だと思いますが。*2


f:id:japanfoundation:20030101000617j:image:rightすなみ:タグを付けた本人ですら、驚くぐらいの意外性があるんです。これは、なかなか書籍では出せない機能だと思っています。


しもやん:それに、タグナビって、いちいち文字を入力しなくていいから楽なんです。クリックするだけで見ていけるから、気楽に使ってもらえそう。


上田:でも、そういった面白さは、すぐには伝わらないと思うので、使い方を知ってもらうための活動というも、これからの課題の一つです。


田中:使う楽しさと言えば、実は、今、トップページの「例文から学ぼう」にはまってるんです。画面を表示させる度に新しい例文が出てくるんだけど、これがけっこう楽しい。


しもやん:何だか、占いみたいでしょう。


田中:そうそう、思わず笑ってしまう例文や、その通りと言いたくなる例文、そして、ときどき人生の悲哀を感じさえるものも出てくる。それで、この間、ついつい職場で繰り返し見ていたら「仕事に集中してください」というのが、出てきた。確かにリアルですね、「ケアナビ」の例文って。


すなみ:これは、さっきも少し話したけれど、コンテンツが面白いと思うので、できるだけ早くそれに触れてもらえるようにと、デザインしたんです。最初はこのアイデア、「そんなの必要なの?」という感じで、田中さんも含めてあまりピンときてもらえなかったようでしたが・・・。


田中:え、時間もなくなってきたので、最後にこれからの課題や夢について聞かせてください。


上田:次への一歩としては、データの拡充はもちろんですが、コンテンツの一部を紙媒体にするとか、音声を付ける、あるいは方言への対応など、すでにいくつかアイデアは出てきています。さらに、今回の「ケアナビ」制作の過程で学んだことは、いろいろな分野の人たちとの協力の重要性です。スタッフだけでなく、関西国際センターの日本語教育専門員、司書、職員に加えて、さまざまな分野の人たちとも多く関わり、協力を得て初めて、「ケアナビ」ができたんです。先に話した二人の顧問以外にも、医療翻訳のグループ、システム開発者、看護現場の経験者、フィリピンの日本語教師グループなど、多くの人たちが力を貸してくれました。広く公開されたことで、今後はまた、多様な「ケアナビ」の利用者と連携することで、新しいニーズ、新しい利用の可能性が見えてくるのではないかと期待しています。それに、コンテンツだけでなく、システム的にも面白いものができたと思っているので、他分野への応用も考えられると思います。


田中:今回の公開が新しいステップへの一歩ということですね。ありがとうございました。




*1:それってなんだ?って人は前回の記事、そして本サイトをチェック!


*2:下写真:キャビネに貼ってある「写真館」で心癒されることも





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