Monday, October 16, 2006

春樹をめぐる、熱い熱いシンポジウム~知的交流の仕事とは?~



みなさんこんにちは、オレペコです。


東京はひじょーに気持ちの良い秋晴れの週末でしたね!こんな良い天気の日は、お出かけするのもいいけれど、気持ちの良いカフェでゆったりとお気に入りの本を読む、なんていう過ごし方も良いのではないでしょうか?





・・・ということで(強引だな(^^;))、今日は、金曜日にちらっとご紹介した本世界は村上春樹をどう読むかをめぐる一連の企画にかかわった職員2名の声をお届けしたいと思います!【日記の最後にプレゼント企画もありますよ~!】


ところで、この「シンポジウムの企画・実施」というお仕事、基金の”知的交流事業”の中の代表的なお仕事のひとつなのですが、そもそも”知的交流”ってなにするの?って感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?そんな方にも具体的イメージを抱いていただけることを期待しつつ・・・





■はじめに企画を見たとき、文芸評論家でもなく、研究者でもなく、”翻訳者”の方たちにスポットライトを当てているところがすごくおもしろいと思ったんですけど、そもそもこういうアイデアがどういう形で出てきたのか、また、これまであまりなかった企画だけに、実際に実施に移すとなると難しいことがたくさんあったのでは?





この企画を中心になって進めてくださった先生方のお一人、四方田先生が文化庁の文化交流史としてイスラエルとパレスチナに出発される際に壮行会と称して内輪で先生を囲んだとき、先生がこのアイデアをおっしゃったのがきっかけでした*1。そのときすぐに実現に向けて動いたわけではなかったんですが、その場にいた誰もが「これだ!」と感じたのでしょうね、その後さまざまな経緯を経て実現に至ったわけです*2


個人的にも、一歩距離を置いて冷静に発言する評論家よりは、より一般の読者に近いところにいる翻訳者に現場の声を聞いたほうがおもしろいと思いました。グローバル・スタンダードで話す人たちではなくて、自らの社会のコンテクストの中で話す人のお話を聞いたほうが、それぞれの国で村上春樹がどのように読まれているかがわかって面白いのではないかな-と。



ほお。


でも実際はドキドキでしたよ。普段、ある意味「日の当たらない」存在である翻訳者の方たちを主役にすることでどの程度人々の注目を集めることができるのかは未知数でしたし*3。しかも今回のシンポでは村上春樹さんご本人をお呼びすることができませんでしたからね・・・でも、終わってみれば全部杞憂*4だったわけですが・・・






確かに、普段表舞台に立つことの少ない翻訳者さんたちを中心に据えるのはかなり勇気がいったでしょうねえ。





でも、企画を進めていく中でそういう不安もだんだん薄まってきました。というのもまず、「会議に来てもらえませんか?」という打診をしたときの反応の”熱さ”がすごかった。日々忙しく活動されている人がこちらからの打診にものすごい勢いで「行きます!」と連絡してきたのにはほんとに驚きましたねえ。「この人たち、春樹と会える、と期待してこんなに熱いのでは?」と不安になったほど。でも、後からわかったんですけど、確かにそういう期待を持った人もいるかもしれませんが、多くの人は、「世界中で村上春樹の虜になっている”同志”に会える!そこで春樹を語れる!」ということ自体に魅力を感じて下さっていたんです。これこそ基金職員の醍醐味ですよね!素敵な出会いの”場”を提供すること。世界のいろんな場所で日本に関わっている人に、”もっともっとこの仕事をやっていきたい!”というインセンティブを与えるきっかけを作ること。*5










反響という意味では、国内外の出版社などからも予想以上に多くの問い合わせがありました。また、シンポジウム当日も、ほとんど途中で席を立つ人もいませんでしたし、一人一人の参加者がパネリストの話に引き込まれ、熱心に聞き入っているのが空気からひしひしと感じられるいいシンポでしたねー。場所がこじゃれたホテルの会議室などではなく、東京大学の900番教室だったのも結果的にはすごく良かったです。みんなが近い感じがして。






■神戸のシンポジウムでも、村上春樹氏の出身校である神戸高校の講堂を使うなど、これまでの基金の知的交流関係の会議とはちょっと違った会場選びで面白いですよね。それにしても、お2人は「欧州・中東・アフリカ課」の職員としてこのシンポジウムに関わられたわけですが、実際参加者にはアジア出身の方も南米出身の方もいたりして、全世界から集まっています。これも基金での仕事のやり方としては珍しいですよね。大変でした?






普段なかなか連絡をとらない地域の人から電話がかかってきたりして、今思えば不思議な日々でしたね(笑)。ですが、いつもはあまりグループで仕事をするということがないので、数名の職員で協力しながら準備を進めていった今回は非常に面白かったですね。シンポジウムの構成も、東京での二日間だけでなく、その後山中湖での合宿、神戸と北海道に分かれてのシンポジウムなど、移動も多いし、それだけに準備も大変でしたが、いい思い出です。







今になってやっぱり世界中からあの人たちがひとところに集まって話ができたのは”奇跡”じゃないかと思います。というのも、今回本を出版するにあたって、参加者に連絡を取ろうとしたら、既に連絡が取れなくなっている人もいたんですよ(笑)。しばらくして、連絡手段のない奥地で執筆活動をされていたことがわかったのですが。そういう、奇跡の瞬間に立ち会えたので、連日の激務も良い思い出ですね(笑)。



■聞けば聞くほど、いろんなエピソードが出てきますね。もっとお聞きしたいところですが、シンポジウムの詳細は本に委ねるとして、最後にブログ読者の皆さんに何か一言、ありますか?






この本には、世界で出版されている村上春樹の翻訳本の表紙絵や、実際の春樹作品(一部)の各国語の翻訳例なども載っていて、それを見ているだけでも楽しめます。表紙絵にはそれぞれ国・地域の日本に対するイメージがよく表れていたりしていますので是非ご覧になってください!







さきほどお話に出ましたように、今回発売になった本の帯には「17カ国・23人の翻訳者、出版者、作家が一堂に会し、熱く語り合った画期的なシンポジウムの全記録」とありますが、当日の空気そのままの本に仕上がったことをとてもうれしく思います。最初に言いましたが、今回は、評論ではなく、読み手に近い翻訳者の声を伝えたかった。もし本が、シンポジウムの内容を社会科学的に論じるとか、批評するとか、そういう方向から作られてしまうと私たちが目指した形が少し変わってしまう。でもこの本は、村上春樹作品を隅々まで知り尽くしている翻訳者ならではの視点から語られたシンポジウムの面白さが沢山詰まった、臨場感いっぱいの本に仕上がっています。3月に沢山の応募を頂いた中で、残念ながら抽選に漏れて当日参加できなかった方々にも自信を持ってお勧めできます!また、ワークショップや神戸・札幌のシンポジウムは2つのセッションが同時開催だったため、このプロジェクト全てが収録されているこの本は、参加された方にも新しい発見があるはず!!是非ご一読ください。






どうもありがとうございました!オレペコもこの本、早速読みましたが、ひとつの現象として村上春樹を題材としてはいるものの、翻訳を通した各国文化事情とでもいいましょうか、各国と日本との関係が描き出されているので、春樹ファンならずとも楽しめる本だと思います。








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・・・ということで!このお勧めの一冊、ブログ読者のみなさんにどどーんと(というほどたくさんではないのですが(^^;))


プレゼントしちゃいます!


ご自身のブログで、『世界は村上春樹をどう読むか』というテーマに関連した記事をお書きの上、このブログにトラックバックしてください!


先着5名の方々にプレゼントいたします。


なお、商品はトラックバックをいただき次第、発送させていただきます。メールアドレスを公開されていない方は、プレゼント発送のために、ご連絡先を wochikochi@jpf.go.jp まで、お知らせいただければ幸いです。(お知らせいただいた個人情報は、プレゼント発送以外には他用致しません。)


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*1:シンポジウムのテーマのヒントってこういうちょっとした会話に潜んでいることが結構多いんですよね。私たち基金職員は個々の分野の研究者でも、専門家でもないので、常にアンテナを張り、最新の動向を知ろうとする姿勢が大切なんです!


*2:この辺の経緯については、本の「シンポジウムを終えて」の章により詳細に書かれていますので、ご興味のある方はご覧ください!イベントの企画がどのようにして出来上がっていくかがよくわかります


*3:オレペコも以前、知的交流の仕事をしていたのでこの不安、すごくよくわかります。その不安を避けたくて、ついつい「勝手知ったる」方にパネリストをお願いしたくなってしまうですが、それじゃあ交流の基盤は広がらない。その意味でも、画期的な試みですねー!


*4:500名の定員に倍以上の応募があったそうです!


*5:確かに!今回出版された本の帯にも「画期的なシンポジウムの全記録」とありますが、まさに、基金が”場”を提供しなければ一生出会うことがなかったかもしれない方々にそのきっかけを提供できたこと自体が素晴らしいですよね!





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