Thursday, March 6, 2008

舞台を創るという仕事、それを支援するという仕事 ~シンポジウムから見えたもの~ Part1






こんにちは。三富です。


東京で春一番の吹き荒ぶ2月23日(土)の夕方、シアタートラムで開かれたシンポジウム「新たな演劇を生み出す環境-ネットワーク化と支援体制を考える」(主催:国際交流基金、早稲田大学グローバルCOE「演劇・映像の国際的教育研究拠点」、財団法人せたがや文化財団)に行ってきました。





このシンポジウムは、2003年世田谷パブリックシアターと国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の呼びかけに応じて、東南アジアを中心に世界7ヶ国の現代演劇から集まった16名のアーティストによって始められた「ローハン・ジャーニー Lohan Journey」プロジェクトのメンバーが、プロジェクトの成果として2005年に発表した劇作品「ホテル・グランド・アジア」の後も、さまざまなコラボレーション作品の創造を通じ、構築・強化しているアジアの演劇人のネットワークについて、今後どのように、展開・発展させていくべきか、また演劇人としてどのように関わっていくべきかについて報告するものです。また、環境整備を担う日本の機関が、こうしたネットワークの動きに対して、どのような役割を果たすべきなのか、支援を行う立場からの提案もありました。




今回は、「舞台を創るという仕事、それを支援するという仕事」と題し、舞台を創る演劇人と、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)などの彼らを支援する立場にある側、両者の報告・ディスカッションの様子を、2回にわたってお届けします*1





■ 第1部 <今後の展望について>


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パネリスト


久野敦子(セゾン文化財団 プログラムディレクター) *モデレーター


プラディット・プラサートーン(通称:トゥア)(タイ/演出家・俳優/マカンポンシアター芸術監督/バンコク・シアターフェスティバル芸術監督)


ロディ・ヴェラ(フィリピン/演出家・劇作家・俳優)


ハレーシュ・シャーマ(シンガポール/ネセサリー・ステージ常任劇作家/M1 フリンジフェスティバル共同芸術監督)


横道文司(国際交流基金 舞台芸術課長)


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久野: 今回のシンポジウムでは、3名のローハン・ジャーニーのメンバーから、(1)コラボレーションの成果と課題、そして(2)コラボレーションの将来像をテーマに、コラボレーションやネットワーキングに関する自らの経験と今後の計画について報告していただきます。






まずは、フィリピンのロディさんからの報告。






ロディ: コラボレーションを実現するにあたって、1つの考えをコラボレーションに参加する皆が共有し、それに意義や重要性を見出すことが必要だと思います。意義や重要性を共有することが、将来の活動につながっていくのではないでしょうか。ローハン・ジャーニーのメンバーも、『ホテル・グランド・アジア』の後、メンバー同士で小さなプロジェクトを作り、ローハン・ジャーニーで培ったネットワークを活かしながら活動をつづけています。個別のプロジェクトによっては、新たな人が参加することでネットワークが広がったり、逆にプロジェクトの意義に共感できない人は、ネットワークに関わることを止めたりといった、ネットワークに関わる人の移動も多くあります。そういった意味で、ローハン・ジャーニーは今分岐点にあるように思います。





また、私個人としては、今後取り組みたい活動のウィッシュ・リストがあります。





1.フェスティバルの開催:


現代演劇フェスティバルは、無限の可能性を秘めた活動です。特に演劇人が技術や情報を共有する有効な方法と思います。私自身は、ハーバート・ゴーと一緒に、マニラで劇作家を育てることを目的としたVirgin Labo Fest(バージン・ラボ・フェスト)を主催しています。また、シンガポールやバンコクでも、ハレーシュやトゥアが主催するフェスティバルがあります。


2.ネットワークの構築:


技術スタッフや脚本の交流を通じ、小規模な協働作業の可能性も模索しています。


3.データベース交流、教育的交流


4.演劇の批評について、美的伝統を作り上げること:  


演劇を育てるためには、助成(資金面)による支援と、批評による支援の2つが必要です。フィリピンの現代演劇の批評のスタンダードは、まだまだ西洋の価値観にもとづいており、フィリピン独自のスタンダードを確立することが重要です。


5.アジアの現代演劇のための学校を設立





このように夢はどんどん広がるけれど、これらを実現するためには資金的問題、時間的制約など多くの課題を1つ1つクリアしていく必要があります。






そして、シンガポールでM1 FRINGE Festivalの共同芸術監督を務める、ハレーシュさん。






ハレーシュ: 今後のローハン・ジャーニーは「どうしていくのか?どういう協力ができるのか?どうやって資金獲得ができるのか?」という課題に直面することになるでしょう。

しかし、”Dream is worth fighting for.”です。また、夢を実現するために、久野さんのようなスポンサーとしてだけでなく、Fighterとして私たちと一緒に闘うことのできる人たちと巡りあっていきたいです*2





タイのトゥアさんからは、バンコク・シアターフェスティバル*3の開催にあたって、日本やフィリピン、シンガポールなどアジア各国の演劇人とのコラボレーション実現の様子について、ご報告いただきました。





「ホテル・グランド・アジア」の後もどんどんと広がりをみせる、ローハン・ジャーニーのプロジェクト。シンポジウムの冒頭で、モデレーターの久野さんが、「6人の友人・知人を介在すれば世界中の人と間接的につながることができる」という「6次の隔たり」(Six Degrees of Separation)という理論に言及されていましたが、ローハン・ジャーニーを通じた演劇人のネットワークも将来はアジアだけにとどまらず、世界に向けて広がっていくことになるのでしょうか。





さて、広がる演劇人のネットワークに対して、日本の支援機関はどんな役割を果たしていくべきなのか、後編ではパネリストのディスカッションの様子をお届けします。




*1:不覚にも、カメラを持参するのをうっかり忘れたため、今回は写真なしの報告です。長文で読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。


*2:セゾン文化財団は、The Necessary Stage Ltd.の『Mobile-アジアの移住者プロジェクト』に2005年、2006年と助成しています。『Mobile』は、2006年6月にシンガポール・アーツ・フェスティバルで初演した後、マレーシア公演(7月)を経て、2007年3月にシアタートラム(三軒茶屋)で上演されました。また『Mobile』の日本公演にあわせて、国際交流基金と世田谷パブリックシアターの共催で、「アジア現代演劇プロジェクト」として、シンポジウムを実施しています。詳細は、こちら→http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/news/0702/02-06.html#peform


*3:ウェブサイト(タイ語):http://www.lakorn.org/home.htm#





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