Tuesday, February 12, 2008

ドイツ・現代アートの最前線






を代表する美術館の一つが “K21”。(正式にはノルトライン・ヴェストファーレン州立美術館 Kunstsammlung Nordrhein-Westfalen といいます。) えっ、現代美術?興味ないなぁ・・、なんていわず、ほんの少しお付き合い下さい。K21は、ついこの間まで日本人の写真家、杉本博司さんの個展が行われていた美術館なんですよ。



去る2月8日、ケルン日本文化会館では、同美術館のキュレータであるドーリス・クリストフ(Doris Krystof)さんの講演会が開かれました♪テーマは日本の現代美術と建築について。実は、クリストフさんは今秋ジャパンファウンデーションの招へいで日本に滞在された一人。ドイツに戻り、今回日本各地でご覧になったアートの体験を交えたレクチャーをしてくださったのです。*1

それでは、来日中のクリストフさんのお話をちょこっとご紹介します。




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みかん(以下M):こんにちは、クリストフさん。早速ですが、日本へいらしたのは今回が初めてですか?


クリストフさん(以下KR):いいえ、実は日本とはずいぶん以前から関係があって、これが3度目です。初めて来たのは1993年だったので、もう10年以上前になりますね。


M: そうなんですか。日本には、どんなきっかけでいらしたのでしょうか?





KR: 93年の来日は、国立西洋美術館でピカソ展を行ったときでした。当時私が学芸員として勤務していたK20で行った展示を同館長でいらしたTさんがご覧になって、ぜひ東京にも巡回させたい、ということで実現したのです。その後、日本の現代作家たちに興味を持つようになりましたが、2000年の来日時には、現在ほどアートが日本の街中に浸透していなかったように思います。


M: 7年前…そういえば森美術館もまだオープンしていませんよね。ジャパンファウンデーションのオフィスからも近い六本木のアートエリア、最近は本当に新しい動きが沢山あって興味深いんです。滞在中は、どんな美術館やギャラリーを周る予定ですか?


KR: 森美術館の他、東京では初台のICC、サントリー美術館、21_21Design Sight、東京都現代美術館、今日はこれから小山登美夫ギャラリーへ参ります。それから今回は地方の美術館へ行くのもとても楽しみにしているんです。大阪では国立国際美術館やギャラリー界隈、豊田市美術館、山口情報芸術センター、金沢21世紀美術館、それから直島のベネッセアートサイト。


M: まあクリストフさん、日本人の私でもまだ行っていない場所がありますよ!現代美術のホットなスポット、本当によくご存知なんですね!ところで、もう芋洗坂のギャラリー・コンプレックスには行きましたか?


KR: Imoarai-zaka..? ああ、今日行ってきました! (←インタビュー当日にとてもよかったようで、ちょっと興奮気味。)


M: 気になる作家を発掘いただけたか、興味のあるところですね。日本ではアーティストにも会うのですか?

KR: ええ、幸運にも奈良美智さんと杉戸洋さんに会う予定です。*2村上隆さんにもお会いしたかったのですが、残念ながら都合がつかなかったんです。*3

M: クリストフさんは、2005年に奈良さん*4、杉戸さんの二人展をデュッセルドルフで企画されていますよね。お二人とはすでにお知り合いなのですか。


KR: ええ、もちろん。K21での展示は、「Yoshitomo Nara&Hiroshi Sugito - Over the Rainbow - 」というタイトルでした。


M: 「Over the Rainbow」って、あのオズの魔法使いの有名な曲ですよね?どんなコンセプトでそんなタイトルになったんですか?


KR: この二人は、愛知県立芸術大で学生時代一緒に勉強していた二人なんです。その頃から、いつか二人で展覧会を開こうという強い希望を持っていたそう。それが、ウィーンのクンストハレ(Kunsthalle)とK21で実現することになったんです。オズの魔法使い、ご存知ですよね?たしかこの物語は、カラー図版が使われた始めての児童書なんです。


M: えっ、それは初耳です。その「オズの魔法使い」が奈良さんや杉戸さんにつながるんですか?


KR: 物語は映画化されていますが、ストーリーの始め、ドロシーの住むアメリカ・カンザスの現実世界では、画面が白黒なんです。それが、魔法の国に迷い込んだ瞬間、世界がカラーになるんです。恐らくですが、この色彩についての感覚が奈良さんと杉戸さんを結ぶ一つの要素となっていたのではないでしょうか。


M: 奈良さんの作品、少女を描いた作品がよく知られていることもあるのですが、たしかに柔らかな色彩が“maerchenhaft(メルヘンチック)”な世界を連想させます。杉戸さんの作品、わたしはまだ数点しか見たことがないのですが、劇場のステージで幕があがったところを描いた油彩を拝見したことがあるんです。やわらかな色で、そこから拍手が聞こえてくるような、何かストーリーが紡ぎだされていくような、不思議な作品だったのを覚えています。

うんうん、いわれてみれば、たしかに両者とも「ファンタジー」とか「メルヘン」な世界観・・・。奈良さんは、ドイツでも有名なんですか?


KR: そうですね。特に美術関係者やギャラリストの間ではよく知られていると思います。杉戸さんは特に関係者には知られていると思いますが、Geheimtipp―これから大いに期待できる作家さんではないでしょうか。

M: 奈良さんや、特に村上隆さんの作品は、ポップカルチャー、今や世界的な人気を誇るジャパメーションやオタク*5とも関連づけられることも多いですが、そのあたりはどのようにお考えですか。ドイツのアーティスト、特に画家に関していえば、非常に政治的、歴史的なテーマを扱う方も多いですよね。それに比べると、日本のアーティストたちの作品は、非常に“軽く”映ったりしないでしょうか。


KR: 残念ながら日本語が読めないので、マンガを実際読んだことはありません。ただ、イメージとして日本のアニメやマンガを目にしたとき、「ピンク」が象徴的な色であるような感じがします。


M: なるほど。ドイツの書店にもMANGAが並ぶ今、日本的なものという先入観などまったく無しにマンガに親しんで育った世代がすでにいると思います。そういったものに何らかのインスピレーションを受けて、作品を制作するアーティストなど、ひょっとしたらいるかもしれないですね。


KR: 今のところ、すぐには思い当たりませんが・・・。ネオ・ラオホ Neo Rauch(1960-)のようにシュルレアリスムとポップを継承するような作家はいますね。新・ライプツィヒシューレを代表する彼の場合は、東ドイツ出身という歴史も背負ってはいますが。


M: クリストフさん、どうもありがとうございました。2週間ほどの滞在ではありますが、ぜひサブカルチャーまで含めた幅広い日本のアートシーンを楽しんでいってくださいね。クリストフさんのような方には、ぜひ日本のアートの新たな一面を発見していただけるのではないかと、期待しています!!







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ブログチームでは、これからも海外からやってくる様々なプロフェッショナルたちの素顔を、皆さんにお伝えしていきたいと思います!どうぞお楽しみに。



*1:ジャパンファウンデーションには海外からの文化人招へいプログラムがあり、今までに来日した文化人の中には、あのレヴィ・ストロース Levi-Strauss(1908-)もいたのですよ!その他、今年来日いただいた方々には、ノーベル文学賞作家のジョン・マックスウェル・クッツェー(John Maxwel Coetzee)さんもいました。全国各地でイベントもあるかもしれませんので、ジャパンファウンデーションのウェブサイトを要チェックですよ。

*2:実際には制作の都合で、残念ながら面会できなかったとのことでしたが、今後もきっと展覧会等で関わる機会があるかもしれませんね!!

*3:そのほかにも最近気になる日本人アーティストを尋ねたところ、近藤聡乃さんのお名前が。カールスルーエのZKM(アートとメディアテクノロジー・センター)でご覧になったそうです。近藤さんは、2008年日インドネシア友好年記念事業の展覧会「Japanese Artists meets Indonesia(仮)」に出品いただく予定です。

*4:奈良さんは実はドイツ語がペラペラなのだとか!!それもそのはず80年代終わりからデュッセルドルフの芸術アカデミーで勉強、その後ケルン近郊で制作していたのです。ジャパンファウンデーション職員のMさんは、かつてケルン文化会館赴任中、まだ有名になる前の奈良さんにお会いしたと言っていました!

*5:2003年にジャパンファウンデーションが行ったヴェネチアビエンナーレ建築展(日本館)ではOTAKU展が話題となりました。詳しくはこちらを覗いて下さいね。




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