Thursday, February 1, 2007

[JFICからの]第15号は「市民社会を支える財団」と題して特集しました!




2ヶ月ごとの『遠近』(をちこち)刊行ごとに現れる情報センターの麦谷です。今年初めの1冊は、「市民社会を支える財団」の特集テーマでお届けします。


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「公」の担い手はどうあるべきか、政府の役割の大小をとっても、比較的小さいアメリカ、逆に大きいフランス・ドイツなど、先進国の中でもアプローチは様々です。翻って、日本はどうでしょうか?



「官」が「公」を独占して担うのではなく、公益法人、NPO、市民団体など「公」の担い手は多様化しており、一人一人の市民も能動的/主体的に自らの社会に関わることが求められているのは確かです。一方で、これは厳しい財政状況下、限られたヒト・カネ・モノで行政が担うべき役割について、より一層精査されている時流があることの裏返えしとも言えましょう。





そのような私達を取り巻く状況で、市民社会には欠かせない存在と言われながら、その活動内容についてはあまり知られていない財団を、今回の特集では様々な角度から紹介しています。





いつもよりちょっぴり硬派ですが、公益セクターのあり方について考える一助になれば幸いです。





○ 巻頭座談 魅力的な財団とは何か~国際交流における財団の役割


榎田勝利 × 小松諄悦 × 中野佳代子


○ 日本の助成財団の歴史と発展 堀内生太郎


○ 企業財団と企業の社会貢献活動~東芝国際交流財団を例に 渡辺隆


○ 公益法人ビッグバン 太田達男


○ 寄付者中心のフィランソロピーへ~米国の新しい寄付の動向 岸本幸子





その他の記事については、目次をご覧下さい。Amazonなどの主要オンライン書店で取扱っている他、お近くの書店でお取り寄せが可能です。


それでは、今回も、『遠近』をより深くお楽しみいただくために、記事や執筆くださった方に関連した読書&WEB案内をお届けします。





◆ 公益法人の全てが分かる


毎年、総務省大臣官房管理室(公益法人行政推進室)が『公益法人白書』を発行しています。書籍としても販売されていますが、概要や本文が総務省HPでダウンロードできます。


最新版は、平成17(2005)年度の統計をまとめた平成18年(2006)年度版で、巻頭座談でも言及していますが、現在の日本の財団法人の数は12,586団体です。


公益法人改革の最新の動きについて把握するには、「公益法人ビッグバン~公益活動を官から民間の手に」をお寄せくださった太田達男さんが理事長を務める社団法人公益法人協会のHPがとても充実しています。





◆ 国際交流を仕事にしよう、実践しようと考えている皆さんに!


地域や草の根の国際交流の重要性について、巻頭座談でお話くださった榎田勝利さんが監修者の一人だった「国際交流・協力活動入門講座」シリーズ3冊(明石書店)は、国際交流・協力活動の最前線で活躍する人たち30名が総力をかけて、分かりやすくまとめたお薦めの本です。


『草の根の国際交流と国際協力』


草の根の国際交流と国際協力 (国際交流・協力活動入門講座)


『国際交流の組織運営とネットワーク』


国際交流の組織運営とネットワーク (国際交流・協力活動入門講座) 


『国際交流・国際協力の実践者たち』


国際交流・国際協力の実践者たち (国際交流・協力活動入門講座)


日本国際交流センターのチーフ・プログラムオフィサー毛受敏浩さんが制作秘話をJFSCのHPに寄せてくださっています。





◆ 事業の目利き、プログラム・オフィサーの仕事の魅力を知る


『助成という仕事―社会変革におけるプログラム・オフィサーの役割』


(ジョエル・J.オロズ著、牧田東一監修、2005年、明石書店)


助成という仕事


プログラム・オフィサーって、何をする人? そんなあなたのための入門書です。


監修者の牧田東一さんは、現在、桜美林大学にて教鞭をとっていらっしゃいますが、日本の民間助成財団の代表格、トヨタ財団のプログラム・オフィサーだった方で、日本の助成財団「業界」ではもとより、特に東南アジアの知識人からの信任も厚い方です。


ちなみに、編者の一人として名前を連ねている平岩あかねさん(ジャパンファウンデーションの職員です!)が、JFSCのHPで内容を詳しく紹介していますので、あわせてどうぞ。


『プログラム・オフィサー 助成金配分と社会的価値の創出』


(牧田東一著、2007年、編集工房球)


プログラム・オフィサー―助成金配分と社会的価値の創出


こちらは、プログラム・オフィサー制度の先進国である米国や、日本の民間財団の先行事例(トヨタ財団、セゾン文化財団、笹川平和財団)などを分析・考察した一冊。上級者向けですが、助成財団のあり方を考えるのに必読の参考書です。





◆ 日本のフィランソロピスト、渋沢栄一を知る


『公益の追求者・渋沢栄一』


(渋沢研究会編、1999年、山川出版社)


公益の追求者・渋沢栄一 (新時代の創造)


渋沢栄一について企業家としての側面だけでなく、民間外交、教育、社会福祉分野でも同じくらい重要な貢献をしたこと具体的な事例とともに豊富に紹介しています。


渋沢栄一記念財団の理事・小松諄悦さんは、昨年秋まで、ジャパンファウンデーションの日本研究・知的交流部長を務め、KBS時代を含めてジャパンファウンデーションのスタッフとして国際文化交流の第一線で長く活躍された、私にとっては大先輩でもあります。小松さんが退任時に、「文化交流36年 1970~2006」と題して語った内容が、JFSCのHPに収録されていますので、こちらも是非!





◆ 適切な資金源を見つけるために


本誌でもご紹介しましたが、ジャパンファウンデーションへの相談で一番多いのが、国際交流活動に必要な資金をどう調達するか。民間財団も様々な助成事業を行い、民間企業もメセナやCSRの観点で公益事業をサポートしてくれていますが、一体、どこへ支援を仰げばいいのか、あらかじめ「傾向と対策」を掴んで、是非、事業を成功に導いてください。


民間助成金ガイド(財団法人助成財団センター)


助成財団約1,000件を収録したデータベース。事業形態や事業分野、募集時期による検索、団体名による検索、キーワード(フリーワード)による検索ができます。


本誌に「日本の助成財団の歴史と発展」をお寄せくださった堀内生太郎さんが専務理事を務めていらっしゃいます。


メセナビ(社団法人企業メセナ協議会)


企業によるメセナ(芸術文化支援)活動の情報のデータベース。企業メセナ協議会が実施した「2006年度メセナ活動実態調査」の結果にもとづいて、メセナ活動を実施している企業など約500社の情報が検索できます。


その他、特集中に触れられた様々な財団についていくつかご紹介します。


国際文化フォーラム


海外の日本語教育と日本国内の外国語教育や国際理解教育を実践しています。その中心となって事業を引っ張っているのが巻頭座談で「財団の活動に魂を吹き込むのは、知恵と気力を備えたスタッフ」とおっしゃる中野佳代子さんです。中野さんもご一緒に仕事をした時期はないのですが、元ジャパンファウンデーションの職員。こんな見上げる先輩がこちらにも・・・。


東芝国際交流財団


CSRにも先駆的に取り組む東芝の企業財団。「CSR活動と企業財団の目指すゴールは共通」と前専務理事の渡辺隆さん。


パブリックリソースセンター


日本の寄付文化創造に取り組む岸本幸子さんは、ジャパンファウンデーション日米センターNPOフェローシップ(※)のフェローとして、1999年にニューヨークの非営利団体United Way of New York Cityなどで実務研修をされました。その帰国報告会で、充実した報告内容を理路整然ときびきび報告されていた姿がとても印象深く心に残っていたので、今回、記事を書いていただくことになって、嬉しく感じています。


日米センターNPOフェローシップは、日本の非営利セクターに従事している中堅層の方に、米国NPOでの中長期のマネジメント実務研修を行う機会を提供することで、日本の非営利セクターの基盤強化を図るとともに、日米間の架け橋になり国際的に活躍できる次世代の担い手(人材)を育成し、ひいては日米非営利セクター間の交流促進につなげようとするプログラムです。





◆ 最後に、国際文化交流の潮流を知る3冊


『国際文化交流の政治経済学』


(平野 健一郎ほか著、1999年、勁草書房)


国際文化交流の政治経済学


『戦後日本の国際文化交流』


(戦後日本国際文化交流研究会、平野健一郎監修、2005年、勁草書房)


戦後日本の国際文化交流


『近代日本と国際文化交流―国際文化振興会の創設と展開』


(芝崎厚士著、1999年、有信堂高文社)


近代日本と国際文化交流―国際文化振興会の創設と展開 


本誌に「国際文化交流としての言語教育事業」についてお寄せくださった東大助手の芝崎厚士さんの著書。国際連盟脱退直後、国際文化交流事業のための機関、財団法人国際文化振興会(KBS)が設立された経緯などが描かれています。KBSは巻頭座談に登場した小松諄悦さんも語るように、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の前身となった団体です。


特集「市民社会を支える財団」に関する本、WEBの紹介はここまで。





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小特集として、昨秋のヴェネチア・ビエンナーレ建築展から、藤森照信氏がコミッショナーを務めた日本館展示「藤森建築と路上観察-誰も知らない日本の建築と都市-」を、表紙、巻頭のカラーグラビアページなどで、増田彰久さん撮影の写真入りで紹介しています。また、藤森氏と長年交友のある建築家で、本誌に随筆「をちこち散歩」を連載中の伊東豊雄氏との対談も収録しています。


そんな藤森ワールドを堪能できる1冊がこちら。


『ザ・藤森照信―総勢100名による徹底探究-歴史・設計・人間』


XKHOME特別編集7ザ・藤森照信 (エクスナレッジムック―X-Knowledge HOME特別編集)


伊東豊雄さんについては、ジャーナリスト・瀧口範子さんによる下記がおすすめです。


『にほんの建築家 伊東豊雄・観察記』


にほんの建築家 伊東豊雄・観察記


また、シンガポールの作家 丁雲氏と、中国語圏の文学に詳しい藤井省三氏との対談を収録しています。丁雲氏は日本滞在中に、作家の佐伯一麦氏ともお互いの文学観をめぐり、私小説の定義やゴッホの絵画、丁雲氏が100万字の恋愛小説を焼き捨てた顛末にまで話題が及ぶ、とてもとても興味深い対談を行っています。国際交流基金HPに、この佐伯氏との対談や、丁雲氏の作品の翻訳も掲載していますので、是非、本誌とあわせてご一読ください。





最後に編集部からのご案内です。


主に過去にご寄稿くださった方の近著などをご紹介します。


◆ 藤原章生さんの新著


『ガルシア=マルケスに葬られた女』


ガルシア=マルケスに葬られた女


毎日新聞記者の藤原章生さんは、メキシコ駐在時代に『遠近』9号に、中南米最大の芸術の祭典、セルバンティーノ芸術祭での「維新派」の公演についてレポートをお寄せくださいました。南アフリカにも駐在経験があり、その折の体験などをまとめた『絵はがきにされた少年』は第3回開高健ノンフィクション賞を受賞されています。そんな藤原さんが新たに綴ったのは、ノーベル賞作家 ガルシア=マルケスの作品『予告された殺人の記録』のモデルにされたことで深い傷を負った女性、マルガリータの物語です。





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次号の4月号は、「隣人、ロシア」(仮題)です。モスクワは遠いですが、ロシア自体は、日本海を挟んで実は隣国なのに、まだまだ身近に感じられるとは言い難い存在ではありませんか? ロシアって、何だか暗そうで怖い・・・(ロシア人の皆さん、すいません)というイメージのロシアが、明るく、素敵で、思わず微笑んでしまうような、隣人が住む国となるような、楽しい記事をたくさんお届けしたいと思っています。お楽しみに!






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