Wednesday, January 9, 2008

突撃!隣のフェロー勉強会!(フランス編)






こんにちは。再び三富です。


前回の「「突撃!隣のフェロー勉強会(ブルガリア編)」に続き、今回も、オフィスを抜け出し(といっても、ブログの取材も歴とした業務の一環ですが)、フェロー勉強会に参加してきました。




今回のフェローは、村上春樹、辻仁成、池澤夏樹などの作品を翻訳し、「春樹をめぐる冒険 ― 世界は村上春樹をどう読むか」にも参加された、翻訳家のコリーヌ・アトランさん(Corrinne ATLAN)*1





「日本現代文学はフランスでどう読まれているか」をテーマに講演してくださいました。

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― 翻訳家の使命は、「外国文化、異邦人のことばを母国語に訳す」こと。





外国と自国の文化との距離を縮めることはできても、完全に無くすことは不可能です。「不可能であること」を認識することも、また翻訳家にとって重要なことなのです。


それはつまり、日本の文学作品をあまりにフランスの作品のように翻訳してしまうと、日本らしさが消え、誤解を生むことにもなります。ある程度の“異邦人性”を残すこと。そのことを念頭に置きながら翻訳をしています。





また、“異邦人性”を残すことに加え、翻訳する上で考慮すべき重要なポイントは、、、





キーポイント1:言語によって異なる、読者が連想するイメージ





「さくら/cerisier」という言葉から連想するイメージ。日本の場合は、春、お花見など多くの物事を連想しますが、フランスの場合は、例えば子供の頃、祖父母の家の庭で梯子に登ってさくらんぼを取った思い出が思い起こされます。


また、「蝶/papillon」については、日本の場合は、単に昆虫というイメージであったり、古くは亡き人の魂を象徴するものでありましたが、フランスの場合は、春の明るさを想起させる言葉です。


このように言語が内包する、もしくはその言語が使われる国や地域の風土を反映した、言語独自のリアリティにも注意しなくてはいけません。言葉が違うと、読者が連想するイメージが異なり、それは作品そのものにも大きく影響します。





キーポイント2:読者それぞれに異なる読み方





哲学者のポール・リクール(Paul RICOEUR)が残した言葉に、「原稿を完成させるのは読者である」というものがあります。書き手は、自分のイメージや意見を翻訳し、原稿を書きあげます。そして、読者は、その原稿を読み、自分なりの解釈や翻訳を加え、作品として完成させます。したがって、読者はそれぞれに異なる読み方をしていると言えます。





この読者独自の解釈には、もちろん各自の期待も反映されています。


例えば、フランスにおける日本文学の読者層は2種類に大別されます。1つは、日本の伝統的な考え方を知りたいと、川端康成や三島由紀夫、紫式部などに関心を持つ日本通の人。もう1つは、今の日本社会を知りたいと村上龍、村上春樹などの日本文学を読む人々。いずれにも共通しているのは、日本文学を通じて「日本」を理解しようとしていることですが、それぞれが思い描く「日本」は異なっています。





キーポイント3:意識的か?無意識的か?読み解く作家の意思


作品にあらわれる作家の意思が、意識的なものであるのか、無意識的なものであるのかを判読し、それを翻訳にどう反映させるかも注意すべき点です。





― 「翻訳は愛だ」(村上春樹)


村上春樹は「翻訳は愛だ」と言っています。


私は、翻訳における外国の文化との距離を消すことはできないというジレンマは、愛に似ていると考えます。初めは、理想としてみていたもの(人)について、愛が深まるとともにその現実を知り、しだいに愛がさめていく・・・。愛しつづけるためには、ある程度の距離を保つことで理想の状態を維持すること、つまりは冒頭の「ある程度の“異邦人性”を残すこと」は文学への愛をもちつづける上で重要な役割を果たしていると言えます。






作品を愛すればこそ、誤解を生まないよう言語独自のリアリティを考慮し、


作品を愛すればこそ、読者の期待にも配慮し、


作品を愛すればこそ、作家の意思を汲み取り、


そして、外国文化、異邦人のことばを母国語に訳す。





翻訳家とは、作品に関わる全ての人々に献身する職業なんですね。


コリーヌ・アトランさんは、1月11日に京都支部でも講演会をおこないます。お近くにお住まいの方は、是非お越しください。






ジャパンファウンデーション京都支部 2007年度第6回フェローセミナー


「日本現代文学はフランスでどう読まれているか」


日時:2008年1月11日 金曜日 18時~19時30分


会場:関西日仏学館稲畑ホール(京都市左京区吉田泉殿町8)


URL:http://www.jpf.go.jp/j/others_j/news/0712/12-03.html


※事前予約は不要ですが、満席になり次第入場を締め切ります。





*1:アトランさんが翻訳した作品の数々は、こちらから。


*2:三富からの言い訳:写真は講演会開始の10分程前の様子。この頃はやや空席が目立ちますが、講演会が始まると満席となっていました。





Monday, January 7, 2008

世界のクリスマス2007~Vol.3 フィリピンの場合






皆さん、明けましておめでとうございます。


もう“あけおめ”なんて若者ことばは恥ずかしくて使えない、三富です。




さて、昨年から引っ張りつづけている世界のクリスマス2007シリーズ。2007年末に記事をいただいておきながらも、年内の掲載が間に合わず、新年を迎えてもまだ引っ張り続けてしまいました・・・。*1


でも・でも・でも・でも、そんなのカンケーね。





さて、今回はフィリピンから。マニラ事務所のIさんにレポートをお願いしました。






12月25日を過ぎてしまいましたが、まだまだ、クリスマス気分一色のフィリピンから。


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(アラヤ通りのジプニーとクリスマス・デコレーション)





『世界一長いクリスマス』 





フィリピンの人たちは、自慢げにそう言います。


巷で言われているフィリピンのクリスマス・シーズンは、9月~翌年2月まで。(なんと6ヶ月!) 


9月になると、テレビでは、「クリスマスまであと何日」というカウントダウンが登場し、ショッピングセンターの飾りつけも、クリスマスに向けて徐々に華やかさを増します。


今日は、フィリピンのクリスマス風物詩を4つ、ご紹介します。





【風物詩1:パロール売り】


パロールは、タガログ語で「ランタン」を意味し、星型が基本。マニラから車で2時間ほど北にあるパンパンガ州などで作られています。


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(写真上:フィリピン大学ディリマン校にて、写真下:マカティ市内のパロール売り)


JFマニラ事務所のあるマカティ市内には、パロール売りが集まる有名な一角があります。パロールのほか、サンタクロースやキリスト誕生の様子など、電球で輝く、様々なデザインのクリスマスデコレーションが売られています。


きれいなので思わず買いたくなってしまうのですが、マニラは日本よりも電気代が高いため、ご注意を。





【風物詩2:シンバン・ガビ】


フィリピンは、国民の85%がカトリック教徒という、アジア随一のキリスト教国。


教会では、クリスマスから数えて4回前の日曜日の待降節から、クリスマスの聖歌が歌われるようになります。


「シンバン・ガビ(Simbang Gabi)」は、フィリピン独特の早朝のミサのこと。フィリピン全土のカトリック教会で、12月16日からクリスマス・イブまでの9日間、毎朝4時ごろから行われます。





1973年からマニラでカトリック司祭を務める西本至神父によると、「シンバン・ガビ」の起こりは、18世紀の初め。スペインから来た宣教師たちが、フィリピンにキリスト教を定着させようと思案していた時に目をとめたのが、ルソン島北部の農民達が年末に行っていた収穫祭。朝暗いうちに田畑の真ん中に「お米の神様」を祭り、その年の収穫への感謝と翌年の豊作を祈ります。





この収穫祭に、まず、ミサを、その後、キリストの誕生祭としてのクリスマスを取り入れたのが「シンバン・ガビ」の始まりだそうです。





f:id:japanfoundation:20071220211754j:image:right(写真:バクララン教会にて) フィリピン各地に広まった「シンバン・ガビ」。9日間完遂すると願いがかなうと信じられており、マニラ一の賑わいを誇るバクララン教会でも、祈りを捧げる老若男女であふれかえっていました。





【風物詩3:ペソ高】


すぐにピンと来た方は、フィリピン通です。


フィリピン政府は、海外出稼ぎ労働者(OFW:Overseas Filipino Worker)を「現代の英雄」と呼んで国策として奨励しており、約190カ国でおよそ120万人が、看護師、介護士、船員、メード、タクシードライバー、ミュージシャンなどとして働いています。実に国民の7人に一人。家族や親戚にOFWがいるのが普通なので、その悲喜劇を扱ったテレビ、映画が共感を呼びます。


クリスマスの時期には、家族に会うため、大勢のOFWが帰国。アロヨ大統領が、ニノイ・アキノ空港で「英雄」たちを出迎える姿が、毎年この時期に報道されます。クリスマスが近くなると、里帰りOFWの持ち込んだドルのペソへの換金や、海外からの送金が増えるため、ペソ高になるのです。





国連傘下の国際農業開発基金(IFDA)のまとめによると、2006年のOFWの母国への送金額は146億5,100万米ドル。フィリピンの国内総生産(GDP)のなんと12.4%。大統領が彼らのことを「英雄」と呼ぶのもうなずけます。





【風物詩4:プレゼント&パーティー】


今年一年お世話になった人への感謝の意をこめて配ったり、クリスマス・パーティーでの交換のため、たくさんプレゼントを買わなくてはいけないのも、この時期。


私の友人のある日本語教師は、一人で100個近くのプレゼントを用意したと言っていましたが、30、40個は、当たり前のようです。


「プレゼントを買う」=「お金がいる」


強盗や窃盗などが増えるのも、うれしくない風物詩(?)です。(師走に入ると、日本も同じですよね。お互い気をつけましょう。)





10月に入ると、各職場では、クリスマス・パーティーの企画がスタート。


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(ランタン・パレード フィリピン大学ディリマン校にて)





会場確保から始まり、ゲーム、出し物、ラッフル(福引)などなど、アジアのラテン系と呼ばれるお祭り好きの才能をここぞとばかり発揮。12月に入ると、職場、学校のクラス、友人同士などのグループで、毎週のようにクリスマス・パーティーが行われます。JFマニラ事務所でも、先週末開催。オフィスのチームワークを盛り上げるためには、欠かせないイベントです。





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(JFマニラ事務所クリスマス・パーティー)





2007年はお世話になりました。2008年が皆さんにとって良い年になりますように。


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(タガログ語の「Merry Christmas & Happy New Year」)





*1:よっぽどこの件が心残りだったのか、私の今年の初夢は、フィリピンに旅行する夢でしたZzz…(*´~`*)





Tuesday, January 1, 2008

 明けましておめでとうございます。






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