Monday, April 5, 2010

 タイ人若手作家 ウティット ヘーマムーン อุทิศ เหมะมูล 氏 インタビューその1です。



 こんにちは。Mです。

 さて、先日本ブログでも紹介しました、ウティット・ヘーマムーン*1開高健記念講演会、私も参加してきました。


 東京での講演会では、主にご自身の生い立ちと作家になるまでの過程についてのお話がありました。周囲が手のつけられないほど悪戯のひどい子どもだったというウティットさんが絵と出会うことで、心の静寂と平穏を取り戻し、お父さんとの衝突を経て進学、苦学し、葛藤し悩みながらここに至った、というお話はウティットさんの作品テーマを理解する上で大きな助けになるお話だったナと私は思いました。








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 奥がウティット氏。手前はコーディネーターの東京外国語大学 宇戸清治先生です。





 さて、講演の忙しい合間に、ウティットさんにインタビューすることができましたので、その内容を2回に分けてお届けします!







 国際交流基金では、開高健記念アジア作家講演会シリーズとして、1989年に亡くなられた開高健氏のご遺族から寄せられたお志をもとに、毎年、日本ではまだあまり紹介されていないアジア作家の方々をお招きし、講演会を実施しています。 実は2001年に招聘した、チャート・コープチッティ(ชาติ กอบจิตติ)氏が日本での講演会の後タイに戻って開高健の『夏の闇』をタイ語に翻訳するよう尽力したのですが、ウティット氏はその本を読み、深く感銘を受け作品にも影響しているのだそうです。*2


 


☆☆☆





-日本の印象はいかがですか?





-前から来たいと思っていたので、胸が一杯です。とてもエキサイティングで、一日24時間では足りないと思うくらいです。毎日新しいものに出会い、それでもまだ全然見足りないという感じがします。


 今回色々な場所を訪れ、好きな場所は沢山あります。桂離宮とか、奈良とか・・・。古都京都は静かで美しい街でした。






 講演会でも、日本に来る前と来た後で印象が変わりましたか?という質問に対して、「子どもの頃から日本のアニメには慣れ親しんでいたし、期待通りです。良い印象が増えています。」と回答していらっしゃいました。






-タイ社会の変化は、ご自身の作品にどんな影響を与えているのでしょうか?





-タイ社会の様々な変化については、作家としていつも観察しています。考えさせられることも多くあります。


 私は、タイの変化を否定はしませんが、物事の広い面のみではなく、深い部分もまた知るべきだと思っています。現代社会は一般的に、社会現象であれ、技術であれ、人間関係であれ、物事の表面だけをとらえようとする傾向があるように思います。


 作家は物事の全体像を深く理解するように努力し、作品を通して読者それを伝えなければいけないと考えています。








-作品を読ませていただいて、家族が重要なテーマになっているものが多いと思ったのですが。





-家族や人間関係というのは自分にとって最も興味のあるテーマです。15歳のときに家を出て、家族から離れたという自己の経験があるので、より家族や人間関係について知りたいと思う気持ちが強いのだと思います。






ウティット氏は進路を巡って父親と衝突し、15歳のときタイの東北部コラートの職業専門学校を受験し、猛反対する父親を尻目に家を出た、という経験があります。その後シラパコーン大学(芸術大学)に進学しますが、父親には芸術を学ぶことについては認めてもらえず、そうこうするうちに大学3年生のときに突然の交通事故で父親を失います。


 子どもの頃のある日。父親の自画像を描いていて友達と話をしようと動いた父親に「動かないで!」と自分が命令したとき、父親が素直に従ったことで、自分が力を持ったように感じた、という講演会で話されたエピソードが印象的でした。


 ウティットさんの中では、父親の存在は本当に大きくて、自分の成功を一番認めてもらいたい人を突然失ったことが、ウティット氏が挑戦し続けていくことの原動力になっているのだな、と思いました。



つづきます・・・




*1:1975年タイ中央部サラブリー県に生まれ。絵を描くことが好きで、芸術大学に進学し絵画を勉強する。1999年の卒業後は、映画作りと音楽制作に没頭し、各地の教育機関で上映活動。さらに、マノップ・ウドムデート総監督の映画『銃口の花』で芸術部門監督を務める。2000年、雑誌に映画批評を掲載し始める傍ら、短編小説を執筆し始め、2009年、3作目となる長編小説『ラップレー、ケンコーイ』で東南アジア文学賞とセブン・ブック賞を受賞した気鋭の若手作家。


*2:今回その同じ作家講演会で同氏が招へいされたということにご縁を感じました。国際交流の仕事はいつどこでどうつながるか分からないところも面白いです。





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