Friday, November 6, 2009

 世界の日本研究者が集まると・・・。






こんにちは、松岡です。

ジャパンファウンデーションは、

・文化芸術交流

・日本語教育

・日本研究・知的交流
という3つの、ぱっと見全然関係なさそうな事業を柱に、海外との文化交流事業を行っている組織です*1。いまさらの説明ですが。




僕の場合、現在がこの中の文化芸術交流を担当する部署にいるので、普通に日々を過ごしていては、なかなか他の分野のスタッフが何をやっているのか見えません。




それではつまらん、




と思いまして、ここは思い切ってお昼の時間を利用して、他の部署の人の話を聞きに行ってきました。




社内の掲示板で大きなイベントは告知されたりしてるんですが、その中でも特に気になったのが「世界日本研究者フォーラム」こちら)。




そもそも「日本研究」っていう分野自体が、一般の方から見てそこまで親しみのあるものではないと思いますが、そんな研究をしてる人が世界中から集まってくるなんて、何だか気になります。



実はこのシンポジウム、既に終わったのですが、色々なメディアでも報道されたようで、なかなか盛況だったようです*2




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今日はこのシンポジウムと、それに先立って行なわれた会議も含め、一連のプロジェクトを担当した二人(企画調整・米州チームKさん、欧州・中東・アフリカチームTさん)に話を聞いてきました。





松岡(M):

今回のように世界中から日本研究者の方々を集めるというプロジェクトは、毎年やってるんですか?

T:

いえ、今回が初めての企画でした。日本研究者と一言で言っても、日本の政治を研究してる人もいれば、文学や歴史学、経済を研究対象としてる人もいたりして様々なのですが、今回は13カ国16名の方が日本に集まりました。ちなみに、使用言語は日本語です。

M:

Kさんはシンポジウムの前に実施された関係者間での会議の方を担当されたとお聞きしましたが、いかがでしたか?

K:

参加者の皆さんからは、別の国の日本研究者と話をして情報交換が出来たのが何よりもよかったという声を聞きました。




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M:

最近では中国の存在感が様々な分野で増してきているような印象があるのですが、現状はどうですか?

T:

興味深かった話が一つあります。

欧米を中心に、「日本研究学科」が無くなって「東アジア研究学科」のように地域全体で一つの学科に改変したりするようなケースというのは出てきてるみたいなのですが、それによって従来であれば「日本研究」にカスリもしなかった人が、「東アジア研究」と広がることで、何かのきっかけで関心を示すようになったりとか、プラスの面もあるようです。

K:

あと、中国と韓国の日本研究者同士が、相互に情報交流をしていたり、日本を介さないで進んでいるケースもあるようですよ。

M:

なるほど。

日本が全てに関与をしなくても、研究者間で自然と情報交流等が進むというのは、一歩進んだ感じがしますね。

今後の予定はどうなってるんですか?

T:

まだ未定の部分が多いですが、今回は自分の国以外でどのような日本研究が進んでいるかという情報を共有できたことが、成果の一つだったと思います。ヨーロッパにはEAJSのような研究者同士のネットワーク組織が既にありますが、今後はそうした研究者同士のネットワークをどう進めていくかということも重要なテーマになるのではないでしょうか。

M:

なるほど。

ありがとうございました。




ジャパンファウンデーションの行なっている日本研究に関する業務は、フェロー*3への日々の支援や海外の日本研究機関への支援など、文芸術交流なんかと比べると見えにくい部分でもありますが、年々積み重ねていくことでその効果がジンワリと染みでてくる、まさに文化交流そのものという部分もある気がしました。
なかなか伝え辛い分野ではあるのですが*4、これからも色々とお伝えしていければと思います。



*1:実際は関係してるんですよー、て話すと長くなるので、略・・・

*2:ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、10月19日NHKラジオ「国内ラジオ第二英語ニュース"Japan & World Update"」、11月1日のジャパンタイムズ、11月2日の読売新聞で報道されました

*3:(日本研究をテーマに来日されている研究者)

*4:あまり深く入りすぎると専門的過ぎて、かといって突っ込まないと事業の説明が出来ない・・・分かりやすく伝えるのは難しいですね。




Wednesday, November 4, 2009

コンサートホールで平和を考える



すっかり冬の気配ですね。北国出身、冬は大好きなmioです。


なぜなら、秋~冬はコンサートや舞台が目白押しの季節だから(寒いのが好き、というのはもちろんですが)。先週末は、彩の国さいたま芸術劇場で、芸術監督の蜷川幸雄氏自らが演出する「真田風雲録」を見てきました。ゴールド・シアターに続くプロジェクト、ネクスト・シアターに集った、約1200人から選ばれた若い表現者(やその卵たち)のエネルギーが集結した、熱い熱い千秋楽でした!





さて、公演シーズン真っ盛りですが、今週の金曜日にはぜひ


国際交流基金の主催によるコンサートにも足を運んでみませんか?








バルカン室内管弦楽団日本特別公演


2009年11月6日 金曜日


昼 │ 14:00~(13:30 open)


夜 │ 18:30~(18:00 open)


会場 │ 第一生命ホール(晴海トリトンスクエア内)


アクセス │ 都営大江戸線「勝どき駅」A2a出口より徒歩8分










バルカン室内管弦楽団は、根強い民族間対立の残るバルカン地域において活動を続け、2009年の5月にはマケドニア人、アルバニア人、セルビア人の音楽家が参加したコンサートを実現させています。この楽団の設立者であり、主席指揮者を勤めているのが、佐渡裕さんにも師事した日本人指揮者、柳澤寿男*1さんです。演奏会の後には、柳澤氏によるポストパフォーマンストークも予定しています。





2009年に、20年ぶりとも言われる両民族が共演したコンサートの様子は、氏のウェブサイトにも掲載されています。






2009年5月17日、コソヴォ北部ミトロヴィツァにおいて、セルビア人・アルバニア人・マケドニア人を楽団員に「バルカン室内管弦楽団」の歴史的なコンサートが開かれた。


バルカン室内管弦楽団は、指揮者・柳澤寿男が2007年にバルカン半島の民族共栄を願って設立したオーケストラである。以後年に一度の開催を続けており、これまでにスコピエ市(マケドニア)、プリシュティナ市(コソヴォ)でのコンサートを開催してきた。そして、今回の開催地にはミトロヴィツァ(コソヴォ)を選んだ。


ミトロヴィツァはイバル川を隔てて南にアルバニア系住民、北にセルビア系住民が住む街である。南北の間には「対立の橋」とも呼ばれる橋が架けられており、それが唯一の交通路となっているが、人々がこの橋を自由に往来することはない。始終、軍隊が警備を行っている。数年前、ある日本のテレビ取材で、セルビア人女性にこの橋を渡ったことがあるかと聞いたことがあった。彼女は「私は橋の南側で生まれたのにもう数十年も橋を渡っていない」と泣き出してしまった。そして、これからもこの橋を渡る日は来ないだろうと訴えた。


私は何とかして橋の南北でコンサートを開きたいと思った。しかしながら、まだ戦後10年しか経過しておらず、様々な政治的理由から開催はかなり困難なものであった。たった14人、たった50分のコンサートを開くために、多くの国連の方々に協力をいただいたばかりか、リハーサルやコンサートは軍隊や警察の警備の中で行われた。それでも約20年ぶりにもなる両民族の共演は、信頼関係の響きとなってミトロヴィツァの南北に響き渡った。


柳澤寿男公式ウェブサイトより)















このような環境で楽団員を集め、音楽を作り上げるには一体どのような思いや苦労があったのでしょうか。柳澤さんのお話は、をちこち28号にも掲載されています。


↓↓↓


指揮者 柳澤寿男に聞く


バルカンの国々でオーケストラを指揮する(聞き手 小澤幹雄 )


「をちこち(遠近)」28号(2009年4月)











冒頭のネクスト・シアターの若者たちもそうですが、音楽や芝居でつながる人と人は、その公演の行われている数十分だけでなく、より大きなネットワークに発展して社会の中に息づいていくこともありますよね。足を運んでいただいた皆様には、音楽で橋の南北をつないだ柳澤氏の想いを感じていただけることと思います。みなさん、ぜひ当日会場でお会いしましょう!




*1:苗字は正しくは木へんに夘





Monday, November 2, 2009

シアトルで日本人アーティストによる写真展に遭遇!



こんにちは、mioです。


ここ数日で東京はぐっと冬の気配になってきましたね。


気がついたら街は年末モードで、猛暑の夏があったことなんて、はるかかなたに感じられますが…


今日は、私が夏休み(といっても9月末)に訪れた旅先シアトルで、ちょうど開催されていた国際交流基金の「巡回展」、「スピリトを写す-日本の現代写真(英語タイトルは:Counter-Photography: Japan's Artists Today)」の模様をお届けします!


そもそもこの「巡回展」とは、国際交流基金の「所蔵美術作品を展覧会セットに仕立て、海外に巡回する展覧会事業」のことで、現在21種類の展覧会が、世界各地を回っています。展示をされるのも美術館だけでなく、今回のようなアートセンターやオルタナティブスペース、文化機関や政府機関の持つ小さなギャラリーや、町の集会所のようなところまで!多くの展覧会セットは、本格的な美術館設備が整っていないところでも展示が出来るように考えて作られているそうです。


詳しくは、 こちら「文化芸術交流>海外巡回展」のページ から。








先日まで原美術館で開催されていた「ウィンターガーデン」展は覚えていますか?(ブログでも…ここや ここや ここで 何度か紹介されていました!)実はこれも、「巡回展」の最新作!現在この展覧会はドイツのケルン日本文化会館で展示されており、その後、イタリアへと旅立つ予定…今後、旅先はどんどん増えていくことでしょう!








この「巡回展」、常に世界中をめぐっているため、メンテナンスで一時帰国するときや出張で現地の様子を確認する時以外には、巡回の担当をしている本人ですら作品を見ることが出来ないことも多いんだとか…!というわけで、今回友人を訪ねたシアトルで開催されていると聞き、これはチャンス!と真っ先に駆けつけたのでした。











前置きが長くなりましたが…これが今回展示を行っていた「Photographic Center Northwest」です!シアトル大学に隣接する写真センターで、普段はギャラリーやスクール、貸しスタジオとして活動しているようです。


もちろん、シアトル大学で写真を専攻している学生も頻繁に利用します。


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受付のある1Fのギャラリースペースから、巡回展「スピリトを写す」は始まります!正面に大きく展示されているのは、杉山晶子さんの「インスパイラルII」


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開放的なラウンジに、稼動壁を使って展示されていました。


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スクール事業が行われているところですので、施設の大半はスタジオと教室。作品はギャラリーだけでなく、教室の中まで続いていきます。これは1階にある比較的大きな教室の中。正面には石原友明さんセルフポートレートと米田知子さんの壁紙を映した作品が見えます。


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ホワイトボードには、アサイメントのメモが!


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展示は小さい教室や教員の部屋のある2階にも続きます…センター全体が展示会場になっていて、どこに行っても作品に作品があるので、思わずトイレの中ものぞいたほど。


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この日本人写真家たちの作品は、シアトルではどんな風に受け止められているのでしょうか?


センターのギャラリーディレクターを勤めるアンさんに突撃インタビューをしてきました!


(写真はありませんが、めがねがおしゃれな、とてもおきれいな方でした)






Q.どんな人が見に来てくれていますか?


スクールに通う学生はもちろん、シアトル大学の美術やアジアに関心のある学生も足を運んでくれています。また今回は、アジア系の雑誌を重点的に広報したこともあり、今まで当センターに足を運んだことのない新しい層が来てくれているという実感がありますね。


Q.スクールの学生はどのように作品を見ていますか?スクールに通い始めた学生が、展示されている写真の前で立ちすくんで、「どうやったらこんな風にプリントできるんだ?!ボクのと全然違う!」とショック混じりに見ていたということもありました。スクール事業を行う同センターにとって、直ぐ近くに作品があるという環境は、ここで学ぶ皆さんにもとてもいい影響があるみたいです。


Q.巡回展を開催してのご感想は?


杉本博司さんなど、著名な方の作品は小規模のセンターではなかなか展示することも難しいもの。細江英公さんは過去にセンターでレクチャーをしてもらったこともあり、彼の作品を展示できることは非常にうれしく思っています。また、展覧会として企画されている、美術館レベルの展示を行えるというのもこの巡回展ならでは。米田さんの作品は、このような時間性を扱う手法が90年代後半にすでに大成させていたということがとても新鮮でしたし、石原さんの顔を写さないポートレートもとても印象的な作品ですね。






アンディレクター、ありがとうございました!





さて、今回友人に再会しに訪れたシアトル、海(と湖)がきれいなとてもすてきな街でした。


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シアトルラテの発祥地でもありますね…!


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おまけに、


観光に訪れた場所には、昔のガス設備をそのまま残した「Gas Works Park」という公園が…!


犬島を彷彿とさせるこの公園…工業遺産の文化的活用の最先端…?!


いろんな収穫のあったシアトル旅行でした。


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