Monday, December 8, 2008

をちこち26号、刊行しました!






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2008年は日英交流150周年。


それをきっかけに、改めてイギリスに向き合ってみよう、というのがこの号です。政治・経済・環境、いろんな面で没落した時期があるイギリス。でも、常に復活するイギリス。伝統を大切にする。でもビートルズやパンクファッションも生み出す。そんなイギリスの底力に迫ってみました。





巻頭鼎談は、黒岩徹さん〔元毎日新聞欧州総局長)、小林章夫さん(上智大学教授)、新井潤美さん(中央大学法学部教授)の3名が参加。


在英経験の長い方たちならではの、イギリスの強さの秘密やメンタリティを語っていただきました。成熟したオトナの国であり、モンティ・パイソンをはじめ「ぎりぎり」のユーモアを楽しむイギリスを研究されている方たちだけあって、「ぎりぎり」のユーモアもまじえながら、深い話をしていただきました。12ページの枠に抑えるのが辛かった(><)、内容たっぷりの鼎談です。





それから、在ロンドンのエッセイストである入江敦彦さんはイギリスの「元気の素」についての軽妙なエッセイを、イギリスでの活躍も目覚しい野田秀樹さん()には、なぜイギリスで上演し続けるのかをお聞きしました(聞き手:長谷部浩氏/演劇評論家)。


今回も豪華メンバー。ぜひご一読ください。感想もぜひ!





話といえば、


■野田秀樹さんへのインタビュー。NODA MAPの舞台が好きなワタシには夢のような企画。ICレコーダーをもって、わくわくインタビューの場にむかったのですが、これが、面白い!! 「野田秀樹論」を執筆した長谷部先生との相性はばっちりで、ユーモアたっぷり、深い話もたっぷり。当初は4ページの予定だったのですが、「これはページ数を増やさねば!!」ということで、ほぼ倍の7ページを充てることになりました。


■特集タイトルが落ち着くまでにも、時間がかかりました。もともとは「再生する英国」を予定していたのですが、ちょーど、そこで、金融危機が・・・。英国がもつ底力に目をむける、というコンセプトに変わりはないのですが、どうしようかと。ちなみに、他のアイディアとしては、「がんばれ!イギリス」「イギリスの元気の素」など。





号は「世界の研究者が見つめるNIPPON」。国際交流基金の柱のひとつ、日本研究をとりあげます。


日本研究の変遷と現在の動向、将来の展望を語る、と書くと、ちょっと堅いのですが、いろんなNIPPONを研究している方たちに登場していただく予定。日本の政治や経済はもちろんのこと、ヤクザ、ジャズ文化に落語、クモ合戦に獅子舞。なんで、こんなNIPPONに興味をもったのか? そもそもリサーチってどうするの? そんな話もとりあげる予定です。どうぞお楽しみに!





Friday, December 5, 2008

今年の(個人的)ベスト映画が名画座で観られる!






昨日、新宿バルト9で『ハッピー・フライト』を観て心楽しい久保田です。





僕は趣味が読書と映画観賞で、この2つについては放っておいても身体が自然に求めてしまいます。


内田樹先生の影響で、小津安二郎監督の作品を観るようになって以来、ずっとこんな状態です。

『秋刀魚の味』*1や『晩秋』『秋日和』は今でも大好きな作品です。




それ以来、内田先生から町山智浩さん*2、ライムスターの宇多丸さん*3と芋づる式に触手を伸ばし、彼らの映画評論に導かれながら映画を観続けています。





今年映画館で観た映画のなかですぐに頭に浮かぶ=個人的ベストは5作品。






『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(There Will Be Blood)』


『シークレット・サンシャイン(Secret Sunshine)』


『ぐるりのこと』


『ホット・ファズ(Hot Fuzz)』


『ダークナイト(Dark Knight)』






どれも本当に(ポジティブに/ネガティブに)心が震える映画でした。




この5つの作品、振り返れば、すべてが町山・宇多丸ホットラインがきっかけで映画館に行ったものでした。懸念されるのは*4『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と『シークレット・サンシャイン』は上映館があまり多くなかったため、その存在に気づかないままに終ってひとが多いのではないかということ。こういう見ごたえがあって、見た人を深く考えさせる映画は、もしかすると商業ベースには乗りにくいのかもしれませんが、観た人は絶対「最高!」って言うんじゃないかと思うんです。





そんななかの1本『シークレット・サンシャイン』は12月13日からの1週間、高田馬場の早稲田松竹でリバイバル上映されることになりました。さらには、小津安二郎監督の『晩秋』『秋刀魚の味』、エドガー・ライト監督の『ホット・ファズ』も上映される模様。12月から1月にかけての早稲田松竹のラインナップは要チェックです、勝手におすすめします!『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の早稲田松竹での上映はもう終ってしまったのですが、DVDがもう出てます。ポール・トーマス・アンダーソン監督、恐るべしです。





以上、12月-1月の(勝手に)おススメ情報でした。




*1:若き日の岩下志麻さん@『秋刀魚の味』、美しい・・・


*2:町山さんのポッドキャスト連載『アメリカ映画特電』。『映画秘宝』の歴史の回と『真説・ザ・ワールド・イズ・マイン』の回はしびれます。


*3:TBSラジオ・ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル。めちゃくちゃおもしろいです! 特に今年7月26日のポッド・キャスト「町山智浩・高橋ヨシキ・平山夢明 3大野獣による鼎談」は面白すぎて腹が捩れます。もちろんライムスターの本業はラップ!! 曲も最高です。


*4:多くの人に観て頂きたいという意味で勝手に懸念しています。





Monday, December 1, 2008

日本語能力試験まであと1週間!






12月7日。




年に1度、日本語学習者にとって大きな意味を持つ日が今年もまたやってきます*1


1984年に開始されて以来、今年で25回目となる日本語能力試験の実施日です。




このブログでも昨年のこの時期、潮風さんが記事を書いています*2


私、久保田はまさにこの試験の海外での実施を担当しているのですが、試験当日を目前に控え、バタバタした毎日が続いています。




昨年度、全世界での応募者は約63万人だったのが、今年はさらに3万人増えて約66万人(!)。なかでも日本国内、タイ、香港、ベトナムで応募者数の伸びが顕著です*3





普段仕事をしているときには66万人というのは実績の数字なので驚いたりしている暇もないのですが、いまこれを書きながらあらためて考えると、1日に66万人が受ける試験って・・・・・・。





個人的な思い出ですが、以前、台湾に留学していたころ、たくさんの友人がこの試験を受けていて、現地の友達と対策を練ったりしていました。ただ、そのときはこの試験の受験者数がこんなに多いとは想像すらしていませんでした。日本語の公的試験を受ける方々が66万人もいるという状況を、その当時の僕みたいに知らない日本人もたくさんいるのではないでしょうか。





この試験は基本的に「日本語を母語としない方」が受ける試験です。すると受験者は必然的にそのほとんどが外国人ということになります。広報もできる限りがんばっているのですが、日本語の学習者への広報が主になってきます。そうすると、日本語教育関係者や教育機関関係者、あるいは日本語を学んでいる外国人のご友人がいる方でもない限り、この試験が現状どのような試験であり、また今後どのように展開していくのか、知らないひとがほとんどなんじゃないかな、と想像しています。




僕はこのような現状を多くの日本人にも知って頂けたらなと思っています*4





さらに、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、現在年に1回であるこの試験を、2009年から年2回実施する予定です(試験の年複数回化)。また、2010年からは25年の伝統を持つこの試験を、よりよいものにしようと鋭意準備を進めています(改定新試験の実施)。このような新しい動きについても、いろいろな形で広報を行っていけたらと考えています。





日本語能力試験という試験がどのように作られ、そして運営されているのか、外部からはわからない部分もたくさんあると思います(ある部分は機密ですから当然ですが)。正直に言うと、僕も学生時代、台湾の友人と一緒にこの試験についてブーブー文句を言っていました。




ただまさに「言うは易く、行うは難し」、批判するのは簡単です。普段は思い至らないだけで、目の前に当然の如くあるものの背景には多くの人々の尽力という膨大な積み重ねがあることがしばしばであるように、この試験に関わってくださっている方々のお仕事ぶりは本当にすごいです。これは身内の贔屓目とだけ言って片付けられるものではないとすら思います。先日発売になった『Monkey Business No.3.5』のなかで、村上春樹さんが英国の作家カズオ・イシグロを評したような、「礼拝堂の広大な天井や壁に長大な時間をかけて一面の絵画を描き上げるよう」な作業をされていると個人的には思っています*5。そんな努力の積み重ねの結果、少しずつでき上がっていく試験問題は、芸術品だと言えると思うのです。僕も事務局の一員として、本当にできる限りのことをしたいと思います。





最近「日本語教育情報局@コンケン」というサイトを見つけました。そこに日本語能力試験のご案内も。





上でも書きましたように、タイではますます受験者が増えてきています。サイトの運営をなさっている西野先生とは面識がないのですが、先生、ご案内ありがとうございます。これからも任国でのご活躍をお祈り申し上げます。





最後になりましたが、受験者のみなさん、ご健闘をお祈りします!がんばってくださいね!!




*1:例年、原則として12月の第一日曜日に行われます。


*2:潮風さん、この前は「きもの」記事のご投稿ありがとうございました!


*3:利用者の方にはわかりにくいと思うのですが、日本語能力試験は(財)日本国際教育支援協会との共催で行っており、日本国内での実施は同協会が担当しています。日本国内と海外で問い合わせ先が異なるのですが、混乱される方もしばしば。「受験地」を基準にお問い合わせ頂ければと思います。


*4:どうしてそう思うのかというのは、書き始めるとどこまでも書いてしまうような気がするので割愛。


*5:原文は「…彼(カズオ・イシグロ―引用者)は巨大なひとつの絵画を書いている。たとえば一人の画家が、礼拝堂の広大な天井や壁に長大な時間をかけて一面の絵画を描き上げるように。それは孤独な作業だ。時間もかかるし、消耗も激しい。一生仕事だ。そして彼はその一部を描き上げるたびに、何年かに一度、我々にその完成された部分を公開する。…」です。