表題にあるように、実は今年は、日本とインドの文化協定締結から50周年を祝って様々な交流行事を行う「日印交流年」に指定されています!*1去る1月7日~8日、その幕開けを飾るアジア4カ国(インド、イラン、ウズベキスタン、日本)共同演劇『演じる女たち--メデイア、イオカステ、クリュタイメストラ』がインドのニューデリーにて開催されました。「ギリシャ悲劇の女性」という共通テーマのもとに、どのような創作活動が行われたのでしょうか?今回は、「日本・南アジア5ヵ年計画」作りに携わった足澤さんが、この演劇をプロデュースした畠さんにインタビューしてくれました!早速どうぞ。
変わるインド
足澤(以下、足) :畠さんはずっと複数の国による共同制作演劇を手がけますよね。今回は、どんなものですか。
畠:3人の演出家が、ギリシャ悲劇の女性を素材に今日の世界を描くというプロジェクトです。ウズベキスタンのオブリヤクリ・コジャクリが「メデイア」、インドのアビラシュ・ピライが「トロイアの女」、イランのモハメド・アゲバティが「オイディプス王」を使っています。日本からは現代アートの中山ダイスケさんが舞台美術で参加しているほか、照明、音響などを担当しています*2。
足:3年間の準備を経て1月にニューデリーの国際演劇祭で無事初演。2007年は日印交流年として日本とインドでさまざまなイベントが行われます。今回の『演じる女たち』初演はそのさきがけですよね。ご成功おめでとうございます。大変だったでしょう。
畠:ほんとうに大変でした。劇場の舞台技術責任者が意地悪で…。
足:そんな インド的な 大変さじゃなくて(笑・(-_-;)(;-_-) チガウチガウ)。パンフもかっこいいですよね。
畠:ええ。事前に何人かの候補者の中から一番いいと思ったデザイナーさんを選んでいました。日本にいる時からやりとりはしていましたが、インドに着いてすぐに1週間くらい、コンピュータの前にいっしょに座って作業したんです。
足:パンフのデザインは昔、畠さんがいろんな南アジア芸能を初来日させてたころ、ヌスラット・ファテ・アリ・カーンが来たときやクリヤッタムとかのパンフを彷彿とさせますよね。
畠:今回のデザイナーさんに渡したサンプルは日本のデザイナーさんのものですが、アジア的デザインを意識したものだったので、それに逆にひきずられたかもしれないですね。
足:引きずられたというか、インド人デザイナーにとっては、これでいいんだ、って感じ? ホームグラウンドでデザインできたのでしょう。全体が統一されて美しいですね。色とかも。
畠:でも、色ではもめたんですよ。
足:このピンクっぽい色?
畠:そう。テーマが女性だからって女性っぽい色はいやだったの。でもデザイナーさんは紫が好きな人で、「これはピンクじゃない、薄いムラサキなんだ」って。
足:きれいな発色ですよ。全ページカラー印刷だけど、それもきれいだし。インドで印刷したとは思えない。
畠:昔みたいに3原色がずれて3Dになったりしてない(笑)*3。
足:インドも変わった。
畠:そうなんです。お客さんも、新しいものを見ることに馴れて、洗練されてきた感じがしました。
足:昔はインドで西洋音楽の公演があったりすると、楽章のあいだでも、とにかく、音がやめば拍手してましたよね。インド音楽はシタールでもボーカルでも即興するので、今そのメロディが良ければ、それをその場で褒めるのが常識だから、良いと思えば素直に反応しますよね。
畠:演劇でも、少し前までは暗転のたびに拍手が起きて、演じるほうが戸惑ってましたけど、今回は最後の最後まで見届けるという態度で見てくれました。
<参加国の役者が集まっての稽古中の様子1> <稽古中の様子2>
インドはインド
足:客席がまとまってたにしても、舞台はどうですか。イラン、ウズベキスタン、インドの3原色なんて全然重ならないし、混ざらないという感じなんですけど。
畠:まあ、女性というテーマだけが共通で、3ヶ国の3人の演出家がそれぞれ作品を作って持ち寄った格好ですからね。
足:それをつき合わせて、練って、まとめていったんですか?
畠:基本的には各自が作ったものはそのまま並べて―ウズベキスタン、イラン、インドの順で―、各パートの間の繋ぎを新しく創ることで、全体としてのまとまりを出そうとしました。
足:どうしてその順序になったんです?
畠:ウズベキスタンは、問題を提起する形でした。イランは内省的。インドは今日的な世界に言及するような展開。で、このような順番になりました。
足:実はすごくまとまった作品になってる?
畠:テーマにはそうかな。でも、スタイルは3人ともまったく違うから、見た目にはバラバラですよ。┐('~`;)┌ ウズベキスタンはスタイリッシュな衣装とオペラ的なスタイルで全体に様式美の世界。イランはミニマルっぽい現代の感じがするし、インドは実験的です。
足:それは各国のカラーが出ているからですか?
畠:国のカラーが一番強く出ているのは、インドですね。イランは、衣装とか目に見える個性を取り去ったら、どこの国の演劇かわからないくらいような普遍性をむしろ意識しています。ウズベキスタンは、衣装や音がとっても中央アジア的ではあるんだけど、内容的には割とシンプル。インドは衣装や音楽を取り去ってもまだまだインドが見える、という感じですね。
足:斬新で実験的なのに?
畠:そうなんです。ウズベキスタンもイランも自分たちの社会について意識的に批評的なんですが、批判の先にあるのは割と普遍的な内容。インドは、言いたい放題言ってると、それがインド的になる。
足:自分のコアにあるインドをためらわずに出せる。ということは、インドはお坊ちゃんなんだ。
畠:国立演劇学校があって演劇の高等教育の必要性と地位が認められているし、演劇的に恵まれた環境だとは言えるでしょうね。
足:しかも、そのインドがニューデリーという地元で上演するから、なおさら余裕があるんですね。
畠:その余裕は悪く働く場合もありますけど。
足:というのは?
畠:上演1ヶ月前に集まったら、インドだけ、ぜんぜん仕上がってなかった(笑)。
足:インド的ですね。でも、インドでは音楽でも詩でも、みんな、即興が基本で、その場でどんどん作っちゃう。
畠:だけど、地元にいるというのはある意味、損ですよ。よそから来たら、泊り込みで、自分の日常とは切り離された場で、その作品に打ち込めますよねえ。
足:インド人は自宅に帰って日常の仕事までこなしながら、大イベントに参加しているわけですね。
畠:彼らも、海外でやるならもっと早く仕上げようとするんでしょうけどね。 (つづく・・・)
共通事項はテーマだけ。それで集まってみると、国によってこんなに個性がでるんですね!これこそ共同制作の醍醐味ではないでしょうか。はじめはぎくしゃくしていた現場を、どうやって盛り上げて本番に臨んだのか、、、次回はそのあたりを聞いてみたいと思います。ヽ(^◇^*)/
- - - - - - - - - - - - - - - -
*1:外務省の公式ホームページはこちら。以前このブログで2006年は「日豪交流年」とご紹介したことがありますように、毎年、日本といろんな国との外交関係の記念年が設定されているんですよ。今年はインドのほかにも、中国、タイ、マレーシアなどとの間でも記念行事が予定されています。
*3:オレペコより:なんともインドらしいですね(^^;)自然に3Dになってたなんてヾ(ーー )ォィ
No comments:
Post a Comment