国際交流基金(以下、基金)では、大学との協定に基づき、主に夏にインターン生を受け入れています。
受入ピークだった8月末~9月上旬が過ぎ、インターン生の数も随分と少なくなりました。
ここでは、去る9月11日に、3名のインターン生による座談会を行いましたので、その様子をご紹介します。
司会:この座談会は、インターンの皆さんの情報共有・意見交換の場として、またこれまでのご自身の実習の振り返りとして、さらには、私たち職員もインターンの皆さんから客観的な立場で基金に対する率直なご意見をお伺いしたいと思い実施しているものです。
それでは、早速1人ずつ自己紹介からお願いします!
(左から、野村さん、楊さん、小山さん、司会者)
楊 潤娥(やん ゆな)(立命館大学国際関係学部3年)
韓国人ですが、母の仕事の都合で高校から日本に住んでいます。
芸術交流部舞台芸術課で実習しています。
これまでに行った主な業務は、これまで基金が行った公演事業の一覧表の作成、海外公演の助成申請資料のデータ入力です。
小山 恵鼓(こやま けいこ)(法政大学国際文化学部3年)
中国人と日本人のハーフです。私も、父の仕事の都合で高校から日本にいます。
情報センターで、基金が発行している雑誌の原稿を入力したり、各国にある基金の海外事務所のウェブサイトの比較や評価をしたりしています。
野村 麻有(のむら まゆ)(一橋大学法学部2年)
私はお二人のような海外経験はなく、日本の教育しか受けていません。
事業開発戦略室で、企業向けアンケートの校正やデータ整理を行っています。
司会:皆さんそれぞれ色々な業務をなさっているのですね。ところで、そもそも国際交流基金のインターンシップに応募された動機はなんですか?
楊:
私はもともと国際交流に興味があり、ちょうど大学のインターンシップ提携先のひとつに基金があったので、いい機会だと思い応募しました。
小山:
私も国際交流に興味があり、できれば将来の仕事にしたいと思っています。
基金は大学のインターンシップ提携先のひとつなのですが、そうとは知らず、個人的に人事課に問い合わせたのがきっかけです(笑)。
野村:
主に三つの理由があります。
ひとつは就活っぽいことをして「働く」とは何かを少しでも実感したかったこと。
今のところ弁護士を志望しており、就活の機会がないからです。
ふたつめは政府系の機関の雰囲気を知りたかったこと。大学のゼミで行政改革を扱ったこともあり、その実態を確かめたかったんです。
最後に、これはお二人と一緒で、国際交流に興味があったこと。私は15年間同じ学校に通い、人間関係も変わらず、環境の変化を経験していないんです。その反動なのか、いろいろな世界を見たい、バックグラウンドの違う人と交流したい、という意識が強いですね。大学のインターンシッププログラムの提携先に基金の名前を発見し、3つを満たしてくれるいい機会だと思い応募しました。
司会:なるほど。皆さんいろいろな思いがあったのですね。実際に基金でインターンシップをしてみて、基金に対するイメージに変化はありましたか?
楊:
「国際交流基金」という名前から、財団なのかと思っていました(笑)。
政府系の機関なので、職員の方はスーツでカタい人が多いのかと思っていましたが、カジュアルな雰囲気で、職員の方も穏やかで気さくな方が多く、安心しました。
女性が多いな、と思いました。
小山:
私は国際交流を仕事にしたくて基金でのインターンシップを志望したのですが、実際の業務はペーパーワークなどの事務作業が多く、業務中に「国際交流をしている!」と感じたことはありません。
むしろ、基金の業務は自分でない誰かが国際交流をするための準備であり、裏方というか潤滑油の役割であると学びました。
野村:
職場では英語が飛び交い、会議は常にバーチャルなのかと思っていました(笑)。
イメージ通りだったのは、文書主義であるところや、法令遵守の意識が強いところです。一見したところ女性は想像以上に多かったですね。独立行政法人化の影響は特に感じませんでした。
司会:働いてみてはじめてわかることも多かったわけですね。最後に、基金でのインターンシップを通して感じたことを、忌憚なく語ってください。
楊:
私は、国際交流は世界平和のために必ず必要だと思いますが、国際交流だけで世界平和を実現するのは難しいということに気づきました。国際交流によって実現できることにも限界があるのです。基金の活動は「日本外交に資すること」を基本的な目的においていますが、国際交流をすることが直接的に日本外交を有利にするとは言いきれません。韓国に駐在していた職員の方のお話にもあったように、韓国では対日交流をした人の一部で対日感情が悪化したケースも見られるようです。韓国で日本語学習者が増え、日本で韓流ブームがおきても、それが靖国問題の解決につながるわけではありません。基金の活動がどの程度その目的を果たしているのか、改めて疑問に感じました。
司会:おっしゃるとおり、国際交流が全ての問題を解決できるわけではないと思います。また、国や地域によっても、国際交流に求められる役割は異なってきます。
日中交流センターという部署がありますが、ここでは中国人高校生の約1年間の日本留学プログラムを実施しています。すぐには成果が出ないかもしれないけれど、地道な草の根交流を通じて、人と人との相互理解や信頼が出来てくれば、将来の国家間関係によい影響を与えていけるかもしれません。そういう、遠い目標を見据えながら、やっている部分もあります。
小山:
基金の主な活動は、日本の文化を海外に伝えることであり、一方通行になりがちだと感じました。もちろん、税金を使っている以上、国益にかなうようにしなければならないから、受信よりも発信が重視されているのは仕方がないのかもしれませんが、理想的な国際交流は双方向のものであり、基金が海外の文化を日本国内に紹介する姿勢がもっと見られると良いと思いました。
司会:なるほど。確かに、ジャパンファウンデーションの目的のうち、最も主要なもの
は日本の文化を海外に紹介することですが、海外の文化を日本に紹介する活動も目的の一つで、相当程度実施しています! 例えば、現在開催中の横浜トリエンナーレやアバンギャルド・チャイナもそうですし、国内での国際シンポジウムや、異文化理解講座なども、日本の方に海外の文化についての理解を深めていただくことを目的としています。
野村:
働くためには自己肯定力が必要だ、と感じました。というのも、毎日の事務作業を通じて、自分が「国際交流に貢献した」というようなやり甲斐を感じたことはあまり多くなかったからです。海外にまたがる企画もあり、自分のしたことは、大きなプロジェクトのなかのほんの一部分にすぎず、行った業務が結果として国際交流にどう反映したのか、簡単には見えないからです。しかし、私が行った事務作業や肉体労働は、国際交流そのものではなくとも、国際交流するために必ず必要で、絶対に誰かがやらなくてはいけないことなのです。一見は地道な事務作業でも、きっとどこかで誰かの国際交流に役立っているはずだ、と信じてとりあえず進めることが大切なのです。この自己肯定力は、特に基金のような政府系組織で働くために必要だと思います。また、お金の使い道や効果を国民に説明する義務もあります。楊さんのお話と重複しますが、国民のなかには基金が日本外交に与える影響に限界を感じ、税金の無駄遣いだと批判する人もいるでしょう。たしかに、基金の活動は日本の外交問題すべてを解決できるわけではありませんが、しかし、解決のための前提というか土台であり、継続して行わなければならないのです。その意味で、自己肯定力は必要なのです。
司会:なるほど、自己肯定力は基金に限らずどの職場に行っても必要かもしれませんね。三人とも基金の活動を客観的な視点から冷静に分析していますね。これこそインターンシップの醍醐味ですね。皆さんには、このインターンシップ中に実際の職場で見て、聞いて、感じて、学んだ基金についての情報を、是非周囲の方々と共有していただければと思います。本日はどうもありがとうございました。